2009/10インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株−WHO
(Vol. 30 p. 190-191: 2009年7月号)

これは、北半球の次季インフルエンザシーズン(2009年11月〜2010年4月)におけるワクチン株についての推奨である。南半球に対する推奨は2009年9月に行う予定である。

2008年9月〜2009年1月のインフルエンザの活動性:この期間中インフルエンザは、アフリカ、アメリカ大陸、アジア、ヨーロッパ、オセアニアから報告されたが、ヨーロッパの一部の国を除いては、全体的に昨年の同時期より活動性が低かった。南半球では多くの国で9月〜11月まで流行が続き、特にオーストラリアでは9月にピークが認められた。オーストラリアとニュージーランドではB型が多数を占め、他国ではA/H1N1、A/H3N2、B型が様々な割合で認められた。北半球では12月〜1月にかけて日本、チュニジア、ヨーロッパ諸国でA/H3N2亜型の局地的な集団発生があり、北米大陸ではA/H1N1、A/H3N2、B型が流行し、特にA/H1N1亜型が米国、B型がカナダで多数を占めた。

最近の分離株における抗原性の特徴:A/H1N1亜型では、大多数が2008/09シーズンワクチン株A/Brisbane/59/2007と抗原性が非常に類似しており、世界中で流行したA/Brisbane/59/2007と中国で流行したA/Hong Kong(香港)/2652/2006の2つのクレードに属していた。

A/H3N2亜型では、大多数がワクチン株A/Brisbane/10/2007およびA/Uruguay/716/2007と抗原性が同じであり、A/Brisbane/10/2007のクレードに属していた。

B型では、B/Yamagata(山形)/16/88とB/Victoria/2/87系統が流行しており、後者が増加してきている。B/Victoria系統はB/Brisbane/60/2008、B/Townsville/2/2008、B/Hubei-Songzi/51/2008、B/Bangladesh/4008/2008の4つのクレードからなっている。前2者と後2者とは抗原性が異なり、どちらも以前のワクチン株B/Malaysia/2506/2004と類似していたが、前2者では若干異なっていた。最近のヨーロッパ、オセアニア、南北アメリカでの流行は前2者であり、後2者は主に中国で流行があった。B/Yamagata系統の多くはワクチン株B/Florida/4/2006とB/Brisbane/3/2007 と抗原性が非常に類似しており、大多数を占めるB/Bangladesh/3333/2007以外にB/Florida/4/2007とB/Brisbane/3/2007の抗原性が類似する3つのクレードに属していた。

抗ウイルス薬への耐性:薬剤耐性に関しては、オセルタミビル耐性が世界中のA/H1N1ウイルスの多くで認められており、A/Brisbane/59/2007のノイラミニダーゼ遺伝子変異に関連していた。最近のA/Hong Kong(香港)/2652/2006はすべてオセルタミビル感受性で、A/H3N2、B型ではオセルタミビル耐性の報告はなかった。ザナミビル耐性ウイルスは報告がなかった。A/Hong Kong(香港)/2652/2006の大部分はアマンタジンやリマンタジンに耐性であつたが、A/Brisbane/59/2007は感受性を保っていた。

不活化インフルエンザワクチンに関する調査研究:現行のワクチンを含む3価不活化ワクチンを接種された人の血清を用いて、赤血球凝集素に対する抗体を赤血球凝集抑制試験により測定した。A/Brisbane/59/2007(H1N1)については、最近の流行株での刺激はワクチン株での刺激に比べ、小児で51%、成人で56%、高齢者で42%抗体価が低かった。A/Brisbane/10/2007(H3N2)は、最近の流行株とワクチン株で同等の抗体価であった。B/Florida/4/2006ではB/Yamagata(山形)/16/88系統株とワクチン株で同等に抗体価が上昇したが、最近のB/Victoria/2/87 系統株ではワクチン株と比べて、小児で35%、成人で67%、高齢者で56%抗体価が低かった。

2009/10インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株
 A/Brisbane/59/2007(H1N1)類似株
 A/Brisbane/10/2007(H3N2)類似株
 B/Brisbane/60/2008類似株

  (WHO, WER, 84, No.9, 65-72, 2009)

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