2006〜2008年に大阪府で発生したSalmonella Enteritidis食中毒事件
(Vol. 30 p. 209-210: 2009年8月号)

2006〜2008年に発生した大阪府(大阪市、堺市、高槻市、東大阪市を除く)のサルモネラによる食中毒事件数は、2006年11件、2007年16件、2008年12件の合計39件であり、そのうちSalmonella Enteritidisによるものが、8件、5件、4件の合計17件あった(表1)。患者数が100名を超えた事件が2006年に1件(事件No.2)、2008年に2件(事件No.15、17)あり、また患者数が80名の広域食中毒事件(事件No.1)も発生した。多くの事件に共通した発生要因として、卵または液卵の取り扱い不備や、調理後の器具の消毒不足による二次汚染が認められた。以下に主な事件の概要を報告する。

事件No.1:2006年7月7日に調製されたティラミス生地を使用した洋生菓子が原因食品の事件である。当該洋生菓子は791個製造され94店舗に出荷されており、そのうち6施設を利用して菓子を喫食した279名のうち80名が下痢・発熱・腹痛等の食中毒症状を呈した。患者便、原材料の液卵(卵黄)、卵黄を使用した洋生菓子からS . Enteritidisが検出された。分離株のファージ型は47であり、パルスフィールド・ゲル電気泳動法による遺伝子解析結果も一致した。洋生菓子の製造工程を調査したところ、殺菌液卵と思い込んで未殺菌液卵を使用していたことがわかった。さらに使用した器具類からの二次汚染を受けたことなども食中毒の原因と推測された。

事件No.2:幼稚園において265名が下痢・腹痛・発熱等の症状を呈した事例で、患者らはいずれも同幼稚園の給食室で調製した給食を喫食していた。原因と推定されたのは2006年7月12日の手作りゼリーであり、調理に使用した柄杓および菜箸が前日に炒り卵の調理に用いられていたことから、これら器具の消毒不足でサルモネラが残存した可能性が考えられた。分離菌株のファージ型は47であった。

事件No.15:2008年8月3日に大学のオープンキャンパスに参加してカツ丼等を喫食した136名が、下痢・腹痛等の食中毒症状を呈した事例で、5府県28保健所管内で発生した広域食中毒であった。発症者の大部分が液卵を使用したカツ丼を喫食していること、および丼に使用しているその他の原料が加工、保存工程でS . Enteritidisに汚染される状況が認められないことより液卵の汚染が考えられた。さらに、調理作業中の液卵の取り扱い不備や、加熱不足も被害を拡大させた一因と推察された。

事件No.17:2008年8月19日の寺院での法要で参列者に提供されたちらし寿司を喫食した121名が腹痛・下痢・発熱等の食中毒症状を呈した事例で、患者便および食品残品よりS . Enteritidisが検出された。ちらし寿司の具材の中でも錦糸卵が原因食品として疑われ、細切りを行う際に、手指、器具および容器等に残存したS . Enteritidisが錦糸卵に付着した可能性が考えられた。

17事例から分離された菌株の生化学的性状は一般的なサルモネラの性状を示し、薬剤感受性試験成績は、すべての株が供試薬剤(ABPC、SM、TC、CTX、KM、CPFX、CP、ST、GM、NA、FOM)に感受性であり、薬剤耐性化傾向は認められなかった。

大阪府立公衆衛生研究所感染症部細菌課
田口真澄 神吉政史 依田知子 河合高生 川津健太郎
山崎 渉 坂田淳子 原田哲也 勢戸和子 久米田裕子

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