2010年インフルエンザシーズン(南半球冬季)に推奨されるワクチン株―WHO
(Vol. 30 p. 301, p. 306: 2009年11月号)

これは、南半球の次季インフルエンザシーズン(2010年5〜10月)におけるワクチン株についての推奨である。北半球に対する推奨は2010年2月に行う予定である。

2009年2〜9月のインフルエンザの活動性:この期間中インフルエンザの活動性がアフリカ、南北アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアから報告された。活動性は前年の同時期と比較して高く、これは季節性インフルエンザウイルスと新型インフルエンザウイルス(以下AH1pdm)の両方によるものであった。

季節性インフルエンザ:北半球では2月に多くの国で広がりがみられ、3月、4月にいくつかの国では減少した。ヨーロッパや他の多くの国ではA/H3N2、日本と北米ではA/H1N1とB型が多く報告された。6〜8月にはアジアのいくつかの国で活動性が増加し、中国ではA/H3N2の集団感染が報告された。

南半球では4月に活動性の上昇が始まり、6月には南アフリカでA/H3N2の集団感染が報告された。アルゼンチン、オーストラリア、チリではA/H3N2とより少ないがA/H1N1が認められた。ニュージーランドでは主にA/H1N1が報告された。B型はマダガスカルとレユニオンで集団感染が発生し、多くの他の国でも低いレベルで検出された。

新型インフルエンザ:AH1pdmは4月に米国で検出されて以来、世界中のすべての地域で発生し、7月までには南北アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの多くの国で優勢に認められた。北半球の多くの国では5〜8月に集団感染が発生したが、いくつかの国では7月もしくは8月に活動性が減少した。その後、9月に再流行がヨーロッパや南北アメリカで報告された。アフリカやアジアでは8月から急速な増加が報告された。

南半球では多くの国で活動性は急速に増加し、いくつかの国では7月にピークが認められた。その後、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、チリ、ニュージーランドでは8月もしくは9月に活動性が減少した。

インフルエンザA/H5N1:2009年2月1日〜9月21日に中国、エジプト、ベトナムから確定症例37例(うち5例死亡)の報告があった。2003年12月以来、15カ国から合計440例(うち262例死亡)の確定症例が報告されている。これまでのところ持続的なヒト―ヒト感染のエビデンスはない。

最近の分離株における抗原性の特徴
A/H1N1ウイルス:世界中で検出されたウイルスは新型AH1pdmが優勢であり、季節性A/H1N1の割合は減少していた。AH1pdmは抗原的にワクチン株A/California/7/2009に類似していた。季節性A/H1N1ウイルスはAH1pdmと異なっており、抗原的、遺伝的にA/Brisbane/59/2007に類似していた。

A/H3N2ウイルス:多くのウイルスは抗原的、遺伝的にワクチン株であるA/Brisbane/10/2007やA/Uruguay/716/2007と類似していた。3月以降ワクチン株と抗原的、遺伝的に異なるウイルスの割合が増え、A/Perth/16/2009やA/Hong Kong(香港)/1985/2009に類似していた。

B型ウイルス:B/Victoria/2/87とB/Yamagata(山形)/16/88系統株が流行していたが、B/Victoria系統株のほうが優勢であった。B/Victoria系統株の大多数が抗原的、遺伝的にワクチン株B/Brisbane/60/2008に類似しており、B/山形系統株は以前のワクチン株であるB/Florida/4/2006やB/Brisbane/3/2007に類似していた。

抗ウイルス薬への耐性:AH1pdmの大多数はオセルタミビルとザナミビルに感受性があった。オセルタミビル耐性のいくつかの症例は予防内服や治療のためにオセルタミビルを使用していた。A/H3N2やB型ではオセルタミビル耐性の報告はなかった。季節性A/H1N1ウイルスの大多数はオセルタミビル耐性であったがザナミビル耐性の報告はなかった。

2010年インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株:
  A/California/7/2009(H1N1)類似株
  A/Perth/16/2009(H3N2)類似株
  B/Brisbane/60/2008類似株

(WHO, WER, 84, No.41, 421-432, 2009)

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