札幌市では、2009年9月に今シーズン初めての季節性インフルエンザウイルスAH3亜型2株を分離した。
感染症発生動向調査病原体検査の検体として札幌市衛生研究所に搬入された、市内の定点医療機関である2カ所の小児科医院において9月初旬に採取された患者2名からの咽頭ぬぐい液をMDCK細胞に接種し、2検体からインフルエンザウイルスが分離された。患者の概要を表1に示す。
分離されたウイルス2株について、国立感染症研究所から配布された2009/10シーズン新型インフルエンザAH1pdmウイルス同定用キットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.5%七面鳥赤血球を使用)を行った結果、抗A/California/7/2009 (H1N1)pdm(ホモ価2,560)に対して<10であった。そこで、2008/09シーズン用キットを用いてHI試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を行ったところ、2株とも抗A/Uruguay/716/2007 (ホモ価1,280)に対しHI価80、抗A/Brisbane/59/2007 (同1,280)、抗B/Brisbane/3/2007(同2,560)および抗B/Malaysia/2506/2004(同2,560)に対しては<10であり、AH3亜型と同定された。
今回分離したウイルスのHA抗原性は、HI試験の結果からは2008/09シーズンワクチン株と抗原性が異なってきていると考えられる。このため、今後、国立感染症研究所から配布される予定である2009/10シーズン用のキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験を行い、抗原性を比較していく必要がある。札幌市における2008/09シーズンのインフルエンザAH3亜型流行は、例年に比較して小規模であった。一方、新型インフルエンザが発生して以来、AH1pdmが主流を占めているが、中国などではAH3亜型も同時流行しているので、本亜型の発生動向にも注目していきたい。
札幌市衛生研究所
村椿絵美 菊地正幸 扇谷陽子 伊藤はるみ 水嶋好清 矢野公一