スナップエンドウが原因と疑われたShigella dysenteriae 感染のアウトブレイク、2009年5〜6月―スウェーデン
(Vol. 30 p. 322-323: 2009年12月号)

細菌性赤痢はスウェーデンにおいては全数届出疾患であり、年間約500例が届け出られ、そのうち約20%が国内症例である。また、多くはShigella sonnei 感染例で、Shigella dysenteriae 感染例は稀で、国内外からの症例を合わせて平均して年間5例程度が届けられていた。

2009年6月10日、4つの郡から6例のS. dysenteriae の報告がスウェーデン感染症予防研究所(SMI)に報告された。その直後に、別の郡の医師から、5月31日に同一のレストランを訪れた25名が胃腸症状を訴えているとの報告があった。また、検査で何人かはS. dysenteriae に感染していることも伝えられた。この菌種の発生は非常に稀であり、2008年には4例の報告しかなく、そのすべてが海外からの持ち込み症例であった。

問題のレストランを利用した後に発症した25例の患者が発生した郡では、そのレストランで提供された食事のリストが作成され、そのリストを用いてどの食品を摂ったかが聴取された。ある誕生日パーティーに関連した事例のあった郡では、パーティーの食品購入責任者に提供した食品と購入先のリスト作成が依頼され、パーティー後に発症した者に食事のうちの何を食べたかが聴取された。残りの3つの郡では、胃腸疾患用の質問票を用いて面談による調査を行うか、あるいは電話によって何を食べたかが確認された。

症例は、「国内検査機関でS. dysenteriae 検査確定されたもの」と定義された。6つの郡から5月24日〜6月15日の間に35例の検査確定例が報告され、このうち3例は二次感染例であった。調査により、レストラン事例、誕生日パーティー事例、そして他の郡からの症例の大部分が、ケニア産のスナップエンドウを喫食していたことから、感染源として指摘され、SMIにスナップエンドウ4検体が送付された。SMIにおいて、5つの郡の患者から分離された12のS. dysenteriae 2型の菌株に対してパルスフィールド・ゲル電気泳動が実施され、11が同一パターンであった。スナップエンドウ4検体から赤痢菌は検出されなかったが、大腸菌が検出されたことから、スナップエンドウへの糞便汚染の可能性が示唆された。

スウェーデン全国で、ケニア産だけでなく他のアフリカの国々から輸入された豆が販売されていた。レストランや他の症例の調査から、この豆が同一の卸会社によって全国に分配されていたことが判明した。興味深いことに、この会社は今年初旬に発生したデンマークのS. sonnei 感染事例に関与した卸会社と繋がりがあった。2009年4〜5月の間にノルウェーとデンマークでもケニアから輸入されたスナップエンドウによると考えられるアウトブレイクが報告された。PCRによって両国の患者とエンドウ豆から赤痢菌が検出されており、今回のスウェーデンのアウトブレイクを含めたスカンジナビア地域で短期間に発生した3つの事例は、偶然の一致ではなく、関連性があるものと考えられた。

スウェーデン国立食品委員会の調査によって、ケニアからの貿易ルートが多岐にわたっていることがわかった。スウェーデンの卸会社は、通常ケニアの一つ以上の供給会社と取引しているが、一つの供給会社は 200以上の農家から農作物を仕入れている。そのため、原因の農家がどこなのかを追跡することは非常に困難となっている。卸会社は高い国際的水準の品質を地域の農家に求めているが、この基準が食品の汚染を防止するために十分厳格かどうか、また、その規制が十分に遵守されているかどうかについては疑問である。

(Euro Surveill. 2009;14(28): pii=19268)

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