新型インフルエンザ死亡者の疫学的特性―韓国
(Vol. 30 p. 323-324: 2009年12月号)

本文は、2009年11月5日までに疾病管理本部に報告された新型インフルエンザ確診者の中で肺炎、急性呼吸不全、敗血症などの余病で死亡した計51人の人口学的特性、診断および抗ウイルス剤投与、臨床経過と主な余病、基礎疾患などについて分析した結果である。

死亡事例の人口学的特性:死亡者51人中男性が27人(53%)、女性が24人(47%)で、新型インフルエンザ確診患者の性別の割合(男56%、女44%)と大差はない。

死亡例の年齢中央値は55歳(2カ月〜83歳)で、10歳未満6人、10代2人、20代3人、30代1人、40代5人、50代7人、60代10人、そして70代以上が17人であった。新型インフルエンザ感染が確認された人の大部分が30代以下であるのと比べて大きく異なる。

症状発現日から診断に至るまでの診断所要期間の中央値は3日(範囲1〜16日)で、1〜3日での診断が20人で最も多かった。

抗ウイルス剤が投与された症例は42人(82%)であったが、確診の前に投与された症例が24人(57%)で、残りは大部分確診日に投与開始された。症状発現から抗ウイルス剤投与までの期間の中央値は3日で、2日以内に投与された症例が17人(45%)であった。

入院期間の中央値は8日で、症状発現日から死亡までの期間の中央値は6日であった。

死亡者に発生したさまざまな余病の中で、肺炎、急性呼吸困難症侯群など呼吸器疾患余病が46人(90%)で最も多い。その他、心筋炎、心不全、高カリウム血症による不整脈などがあった。

胸部X線や臨床像上肺炎所見がなかった症例は計13人(26%)であった。

季節性インフルエンザ感染と関連した肺以外の余病には筋肉炎、心筋炎、心膜炎があり、その他Toxic shock syndrome、中枢神経系余病などが発生することがあり、基礎疾患の漸次的な悪化によって死亡することもあることが知られている。

国内死亡者で、喀痰や血液から細菌または真菌が検出されたのは10件で、細菌が6件、マイコプラズマ抗体陽性1件、真菌2件、結核菌が1件であり、細菌が確認された6件の内訳は、Staphylococcus aureus が2件、Klebsiella が2件、MRSA(Methicillin-resistant S. aureus )が1件、Streptococcus pneumoniae が1件であった。

死亡者の中で疾病管理本部の分類による新型インフルエンザ高危険群は計42人(82%)であったが、5歳以下が4人、65歳以上が22人(このうち19人は慢性疾患を持つ)、これ以外の年齢で慢性疾患を持った症例が16人であった。妊婦や分娩後2週以内の産婦は1人もいなかった。慢性疾患では悪性腫瘍が一番多く、糖尿病、喘息など慢性肺疾患、慢性腎不全の順であった。

10月以降、新型インフルエンザ疑い例に対する積極的な抗ウイルス剤の早期投与勧告とともに、11月から始まる子供と青少年に対する予防接種の成果があがれば、感染者だけではなく死亡者もかなりの数が減少することが予想される。しかし、既に集中治療室(ICU)で治療中の患者と早期に抗ウイルス剤を投与したにもかかわらず重症に進行する患者によって新型インフルエンザ関連死亡者の発生はしばらく続くと見られる。

今回の分析結果は、死亡者に対する記述疫学的分析で死亡と関連した危険要因を明らかにすることはできなかったが、既に報告された季節性インフルエンザの余病事例と外国の新型インフルエンザ重症事例の臨床像を比べることができた。今後、現在までの死亡者だけではなく、重症に進行したすべての患者に対する深層的な疫学的分析を通じて、新型インフルエンザの臨床像を究明するための基礎資料を確保することで、インフルエンザ管理対策および臨床現場で患者治療に活用することができると予想される。

(韓国CDC,週刊健康と疾病, 第2冊, 第46号, 2009)

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