本校における麻しん予防接種率向上に対する取り組みについて
(Vol. 31 p. 42-43: 2010年2月号)

1.本校の概況
本校は、全日制課程普通科(1学年9学級)に加え、定時制課程普通科(1学年1学級)を併置し、今年で創立 114年目を迎える。全日制生徒1,077名は三河全域から通学しており、ほとんどが大学進学を希望している。また、2002(平成14)年度からの10年間は、文部科学省より「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」の指定を受け、近隣の大学や研究機関等と連携を深めている。

2.本校における勧奨指導の取り組み
(1)2008(平成20)年度:対象学年の担任団の協力を得ながら勧奨指導を進めたが、新制度の初年度で始動が遅れたこと、接種済み生徒の把握が徹底できなかったことなどが影響し、9月末の接種率は57.4%という状況であった。インフルエンザ予防対策との兼ね合いを懸念して、10月中旬に未接種生徒全員を集め、養護教諭による直接集団指導を行ったところ、12月末での接種率は93.0%となった。さらに、卒業式予行の日に、保護者あての予防接種最終勧奨文書を、封書で個別に配布したところ、3月末で目標の95.5%に到達した。

(2)2009(平成21)年度:前年度の反省をふまえ、平成21年度は初動を重視して指導を行うこととした。前年度の学校保健安全委員会で、学校医より可能な限り1学期中に接種を済ませること、さらに海外留学の際などの予防接種の重要性等に関して助言があった。

これらを受けて実施した平成21年度の取り組みを表1に示した。学年担任団へ月末ごとに接種状況を報告し、未接種生徒への勧奨依頼等の指導を進める中で、医療機関によっては事前予約が必要であるという情報を得た。そこで8月中旬の学年出校日に学年主任より、夏休み中に接種予約をとるよう呼びかけたところ、9月末現在での接種率は、前年度比25ポイント増の82.3%となった。さらに、今年は新型インフルエンザ等の影響を考慮して、10月上旬に未接種生徒全員を集め、養護教諭による直接集団指導を実施したところ、10月末には目標の95%にとどく結果となった(図1)。なお、5月末および10月末の西三河東地区県立学校(全日制)のデータは調査未実施である。

3.地域との連携
予防接種の啓発ならびに勧奨指導を進めていく中で生じた疑問に関しては、岡崎市保健所健康増進課の麻しん予防対策担当の方を訪問して質問するとともに、情報の共有を図った。

4.本校における接種勧奨の成果およびまとめ
(1)予防接種に対する意識の向上について:本校の保護者および生徒は、健康管理についての意識が高く、必要性を理解すれば行動に移すことが可能である。しかし、日常の学習活動や部活動など多忙な中で、必要とわかっていても後回しにしてしまう生徒も少なくない。麻しんの予防接種の必要性を、学校や生徒の実情に合わせ、強調する部分を明確にして勧奨指導にあたることが大切であると考える。予防接種の必要性を未接種者に対して何度も繰り返し指導を行うことで、麻しんという病気の感染力の強さとその重篤性について正しく認識させるとともに、予防接種は、個人を病気から守るためだけでなく、社会全体を病気から守るために必要であることを理解させ、進んで予防接種を受けに行く姿勢を持てるよう、こまめに根気強く指導することを心がけた。

(2)予防接種を受ける時期の指導について:秋から冬になると、季節性ならびに新型のインフルエンザの予防接種を受ける生徒も多くいる。このため、インフルエンザワクチン等他のワクチンとの接種間隔を考慮して接種勧奨を行うことも大切である。接種の時期によって、どちらを先に接種したら効率よく行えるかを助言してきた。3月の卒業後も接種状況が把握できる体制を作っておくことが望ましいと考える。

(3)校内連携の確立について:対象生徒に直接指導するのは、対象学年の担任団が主体となる場合が多く、学年担任団の理解と協力なくして、勧奨指導を徹底するのは大変困難である。年度初めに保健部から協力を依頼する際に、先生方にも麻しん教育啓発DVD を見ていただき、麻しん予防の必要性を理解していただくとともに、現在の接種状況をこまめに報告し、連携をとりながら接種勧奨を進めていく。また、科目保健の「健康の保持増進と疾病の予防」に関連づけ、必要に応じて保健部としての集団・個別指導に発展させることなども大切であると考える。

5.今後の課題
平成21年11月24日に開催された西三河支部養護教諭研究会において、本校の取り組みに関して情報提供をしたところ、「麻しん予防接種の勧奨指導をとおして集団感染予防の重要性を生徒に理解させ、他の感染症についても予防する意識を育てる指導へと発展させたい」、「校内の連携を充実させたい」等の意見が活発に出されていた。

学校における麻しん予防接種の勧奨指導は5年間という時限措置であるが、前年度までの指導を活かし、校内の協力体制をさらに整えるとともに、保護者や地域の関係諸機関、各学校間とも連携を取りながら、より効果的な計画を立てて指導を進めていきたいと考える。

愛知県立岡崎高等学校保健室
(まとめおよび文責)同校養護教諭 塚田千子

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