2009年予防接種に関する戦略諮問委員会ミーティング
(Vol. 31 p. 59, 64: 2010年2月号)

予防接種に関する戦略諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts on Immunization: SAGE)は、ワクチンの研究開発から予防接種の配分に至るまでの事項を取り上げて、WHO 事務局長に報告する。SAGEはすべてのワクチン予防可能疾患を対象とする。2009年10月27〜29日にSAGEミーティングがジュネーブで開催された。

地域レポート(西太平洋地域のみ抜粋):西太平洋地域は、2005年に、2012年までの麻疹排除を目標として設定した。しかしながら、多くの国々が既に1996〜2002年までにキャッチアップを目的とした補足的ワクチン接種活動(SIAs)を加速させていた。2回接種の普及とSIAsによって、ほとんどすべての国で接種率が大幅に改善し、2000年のデータと比較して、2008年では死亡数が92%減少した。

地域人口の82%を占める中国および日本から、2008年に地域全体の97%の患者の発生報告がなされた。しかし両国においては、2009年も実質的に患者発生は減少傾向を示している。中国ではキャッチアップSIAsを実施した州が増え、日本では5カ年間の13歳および18歳を対象にしたSIAsを含む麻疹排除計画が始まっている。全地域で全数サーベイランスが実施されている。

麻疹排除を達成するために必要な取り組みとして、感受性がある年齢群(流行下における年齢分布から把握)への取り組み、他の地域からの輸入例に対する取り組み、不十分なサーベイランスへの取り組み、不十分な対策資金および政治的な関与に関する取り組みが挙げられる。

この地域の人口の88%を占める6か国(中国、日本、ラオス、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィリピン)では、直ちに特別な対策がとられなければ、2012年の麻疹排除達成は困難と考えられる。

SAGEは2012年の麻疹排除達成に必要な事項として以下の5つを再提示した。
(1)2回目の麻疹含有ワクチン接種(MCV2)の接種率が低い地域の人々や、免疫レベルの低いことが確認されている特定の集団(若年成人、移民、少数民族)に対する質の高いSIAsの実施。

(2)小児における十分な免疫確保のための定期接種体制の強化。その方法としては、MCV2接種を2歳台に実施すること、高いMCV2接種率を郡レベルで達成すること(中国など)、小学校入学時前のMCV2を確実に実施すること。

(3)全国で統一された検体収集体制を含む、症例ごとの全数サーベイランスシステムの改善。これらにより免疫の低い層が特定でき、排除に向けた進展をモニターできる。

(4)WHO加盟国やパートナーから必要な資源の動員。

(5)高度の政治的介入。

麻疹根絶:SAGEは、次回の麻疹コントロールへの世界的目標に関する提言の提出前に、麻疹根絶の実現性の評価を行うことの重要性を強調した。麻疹排除は生物学的には可能であるが、計画立案上、政治上、経済上および社会上の局面を注意深く評価する必要がある。事務局は、2010年1月に開催されるWHO総会の執行理事会で、2015年までにすべての国が、2000年と比べて麻疹死亡を95%減少させる、人口100万人当たり5症例未満の発生に抑えるという目標を提示したレポート「Global immunization vision and strategy」を提出することを確認した。

また事務局は、麻疹根絶にかかる費用および医療システムに対するインパクトに関連する研究の結果、および2010年1月に開催される執行理事会合の成果をSAGEに報告する予定である。

(WHO, WER, 84, No.50, 517-532, 2009)

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