イングランドでの家禽の肝臓料理に関連したカンピロバクター感染症の集団発生
(Vol. 31 p. 79: 2010年3月号)

カンピロバクター(Campylobacter )はイングランドとウェールズでもっとも一般的な細菌性食中毒の原因病原体である。サルモネラ感染症の発生は1990年代後半より減少傾向にあるが、カンピロバクター感染症は増加傾向で、2009年は著明な増加が認められた。カンピロバクター感染症には肉、殺菌されていない牛乳、未処理の水などが関連し、疫学的に複雑であり、最も一般的な原因は生の鶏の取り扱いや調理不足の鶏の喫食である。

2009年はこれまでに、イングランドでの11事例のカンピロバクターによる食品媒介集団発生がHealth Protection Agency(HPA)に報告された。このうち10事例は行事やレストランなどでの食品提供サービス業(ケータリング業)、1事例は学校であり、合計 259人が感染した。11事例のうち9事例(82%)の集団発生は家禽の肝臓(8事例が鶏、1事例がアヒル)のパルフェまたはパテの喫食と関連しており、学校での事例はチキンカレーの喫食と関連していた。今回のケータリング業における集団発生から示されることは、家禽の肝臓パルフェまたはパテは意図的にさっと揚げただけの不十分な調理により下ごしらえされていたことである。カンピロバクター感染症における肝臓のパルフェまたはパテに関連した食品媒介集団発生の割合は、1992〜2006年の 9.5%(95事例中9事例)から2007〜2009年現時点の75%(20事例中15事例)に増加している。スコットランドにおいても同様な事例が最近報告されている。

生の家禽の肉や動物の肝臓の汚染拡大と関連したカンピロバクター感染症はよく報告されている。研究によると、鶏の肝臓の内部と表面の両方にカンピロバクターのような病原体は存在し、不十分な調理では最終製品に残存し得る。このことから、肝臓やその他の臓器を、安全に喫食できる内部温度にまで加熱することが必要である。また肉のパテ料理はサルモネラやリステリアの感染にも関連してきた。ケータリング業者や消費者はこれらの危険性に留意し、適切な感染制御手段をとるとともに、感染リスクを減らすために、Food Standards Agencyの提供している助言に従う必要がある。それはたとえば、生肉の取り扱いを行う際に別の食材への交差汚染を防ぐこと、動物の内臓調理は徹底して行うこと、これには家禽の肝臓を含み、喫食前に中心温度を70℃で少なくとも2分以上加熱、あるいは同等の処理をすること、冷蔵庫で適切に食品を保存することなどである。

(Health Protection Report, 3, No.49, 2009)

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