2010年2月、兵庫県神戸市において2009/10シーズン初めてのB型インフルエンザウイルスによる集団感染事例があり、ウイルスが分離されたので報告する。
神戸市内東部にある幼稚園の年少クラスで2月1日よりインフルエンザB型(迅速診断キットによる)での欠席者が観察され、翌日にはクラス29人中4名の欠席となり、5日間の学級閉鎖の措置がとられた。その後、2月5日には同クラス内で13名の感染拡大が確認された。
当研究所には、迅速診断キットでインフルエンザB型と診断された同幼稚園の園児2名の検体(咽頭ぬぐい液・鼻腔ぬぐい液)が搬入された。MDCK細胞でウイルス分離を実施、初代培養3〜4日でCPEが観察された。このウイルス培養上清液に対して0.5%モルモット赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を行ったところ、HA価は256〜512倍を示した。
そこで、国立感染症研究所より配布されている2009/10シーズンインフルエンザウイルス同定キットにて赤血球凝集抑制(HI)試験による型別同定を行った結果、分離された2株は抗B/Brisbane/60/2008血清(ホモ価5,120)に対して各々HI価40と80、抗B/Bangladesh/3333/2007血清(同2,560)に対して各々HI価10を示した。一方、抗A/California/7/2009(H1N1)pdm血清(同5,120)、抗A/Brisbane/59/2007(H1N1)血清(同640)、抗A/Uruguay/716/2007(H3N2)血清(同2,560)ではいずれもHI価<10であり、分離された2株はB型インフルエンザウイルス(Victoria系統)と判定された。
昨2008/09シーズン、当研究所にて分離同定された神戸市内のB型インフルエンザウイルス30株はすべてVictoria系統で、2008/09シーズン同定キット抗B/Malaysia/2506/2004血清(ホモ価1,280)に対してHI価80が24株、HI価160が5株、HI価320が1株と、HI価の低い傾向がみられた。そこで、今回分離された2株も抗B/Malaysia/2506/2004血清に対する赤血球凝集抑制(HI)試験を試みたところ、HI価はそれぞれ40と80(2009/10シーズン抗血清と同結果)で、昨年と同じ傾向であった。
昨年分離の30株のうち、ワクチン接種歴未記入のものも含まれるが、少なくとも11症例についてはワクチン(ワクチン株は山形系統)の接種歴があった。本症例のうちの1症例は季節性ワクチンの接種歴(2009年10・11月)があったように、ワクチン接種の有無にかかわらず、感染防止の啓発が重要であると思われた。また、新型インフルエンザの流行は落ち着き、季節性インフルエンザの流行が懸念されることから、今後も医療機関の協力を得てサーベイランスを強化し、発生動向に注意していきたい。
神戸市環境保健研究所 須賀知子 秋吉京子
神戸市保健福祉局予防衛生課 衣川広美 黒川 学
岡野耳鼻咽喉科 岡野安雅
大倉クリニック 大倉完悦