2009年5月〜2010年1月までの間に103医療機関から200例が登録された。年齢は0歳〜15歳までで(年齢不明1)、0歳が71人(36%)、1歳が61人(31%)、2歳が33人(17%)、3歳、4歳がそれぞれ13人(6.5%)、5歳が4人(2%)、6歳、9歳、13歳、15歳がそれぞれ1人であった。0歳の月齢は、8カ月が12人、7カ月が11人、11カ月が10人であり、7カ月以上が47人で66%を占めた。
報告された症例の診断名は、髄膜炎が最も多く128人、次いで菌血症77人、敗血症26人、肺炎20人、急性喉頭蓋炎12人などであった。診断の組み合わせを表1に示した。髄膜炎単独が59人、髄膜炎+菌血症が34人と最も多かった。
転帰は、「入院後退院」(70%)が最も多く、「現在も入院中」(18%)が次いで多かったが、重度の後遺症、死亡もみられ、これら重症例はいずれも髄膜炎の診断であった。聴覚障害が6人、軽度の後遺症(脳波、CT、MRIなどの異常所見のみの場合)が22人、中程度の後遺症(日常生活に支障ない程度)が3人、重度の後遺症(発達・知能・運動障害など)が5人、死亡が3人であり、登録された患者の致死率は1.5%であった。データベースでは転帰についての修正を行うことができるようになっている。しかしながら、修正されていないものも多いと思われるので、解釈には留意が必要である。
検査の実施状況は、髄液細菌培養が200人中127人に実施され、106人が陽性、21人が陰性、髄液迅速検査(塗抹)は98人に実施され、75人が陽性、23人が陰性であった。血液細菌培養は200人中160人に実施され、143人が陽性、17人が陰性であった。血中白血球数は175人に検査が実施され、131人が増加、12人が減少、32人は正常であった。CRPは168人に検査が実施され、163人が陽性、5人が陰性であった。
薬剤の使用状況を表2に示した。薬剤の使用状況とその効果については、セフトリアキソンが100人と最も多く使用され、有効と回答されたものが94人(94%)、無効回答は無かったが効果不明が6人であった。メロペネムは80人に使用され、有効と回答が76人(95%)、無効は1人、効果不明は3人であった。セフォタキシムは66人に使用され、65人(98%)が有効、1人が無効と回答した。パニペネム/ベタミプロンは44人に使用され、39人(89%)が有効、2人が無効、3人が効果不明と回答した。アンピシリンは19人に使用され、17人(89%)が有効、1人が無効、1人が効果不明であった。セフタジジムは2人、ペニシリンは1人と使用数は少ないが、いずれも有効と回答された。バンコマイシンは1人に使用されていたが無効と回答された。ステロイド剤は、109人に使用され、有効と回答したものが83人(76%)であった。
髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、水頭症が診断名に含まれていた者の薬剤使用状況は、セフトリアキソン+メロペネムが31人で最も多く、次いでセフォタキシム+メロペネムが22人、パニペネム/ベタミプロン+セフトリアキソンが22人で多かった。
これらの結果は、発生動向調査では把握できないが、臨床および公衆衛生従事者にとって有用な情報であると考えられた。これ以外にも、登録された情報について様々な角度から集計・解析し、情報を発信していきたいと考えている。今後もHibデータベースの認知度をあげて、登録件数を上げることに努めたい。データベースによる医師の自発的な登録の方法は、2008年1月に麻疹が全数報告になる前に、「麻疹発生データベース」として運用されていたものと同じである。このデータベースは、麻疹対策に有用であると判断され、発生動向調査における全数把握制度に継ぐ形となった。実態を正確に把握するため、さらに対策に役立てるためにも、登録報告数を増やしていくことが重要である。
国立感染症研究所感染症情報センター
大日康史 菅原民枝 多屋馨子 山本久美 佐藤 弘 安井良則 岡部信彦