Hibワクチン被接種者の健康状況と副反応調査
(Vol. 31 p. 99-100: 2010年4月号)

1.目 的
2008(平成20)年12月19日、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン(アクトヒブ®)が発売された。需要が当初の予想に反して供給量を上回り、現在計画販売されている。このワクチンは予防対象疾患の発症頻度の低さと、いったん発症した場合の重症性から、広く免疫を行き渡らせるべく定期接種に採用されるべきである。諸外国ではその有効性と安全性に関して多数の報告があるが、わが国には無い。そこで、わが国のHibワクチン被接種者の健康状況と副反応状況を知ることを目的として全国調査を計画した。

2.方 法
無作為に選定したHibワクチン接種医療機関(750)あてに研究目的と方法を示した趣意書を送付して協力を依頼した。文書で同意の得られた被接種者の保護者によって作成された健康状況と副反応を記した報告書は、いったん医療機関で一定数に達した時点で札幌市立大学に郵送してもらった。郵送書類は前述の保護者からの健康状況調査書、医療機関ごとの通しナンバー付き一覧表、それぞれの接種日時、医療機関からの重大副反応報告からなる。

(倫理面への配慮)
本研究は国立感染症研究所の倫理委員会で承認された。個人票は被接種者をイニシャル化し、生年月日を含む個人情報は医療機関で切り離し保存され、札幌市立大学には知らされぬよう配慮した。

3.結 果
2009(平成21)年4月1日〜2010(平成22)年2月9日までに報告された報告書は267施設1,768件であった。被接種者の性別では男934例(53%)、女834例(47%)、年齢分布は0〜6カ月419例(24%)、7〜11カ月669例(38%)、1〜5歳676例(38%)、6歳以上2例、年齢記載なし2例であった。接種回数では1回目接種1,065例(60%)、2回目接種431例(24%)、3回目接種272例(15%)であった(表1)。他のワクチンとの同時接種は519例(29%)であり、うちDPTとの同時接種が497例(同時接種の96%)、次いでMRワクチンの10例であった(表2)。

副反応は全身反応と局所反応に分類した。全身反応なしは1,269例(72%)、反応ありでは咳・鼻汁320例(18%)、発熱240例(14%)、嘔吐・下痢131例(7.4%)、その他34例(1.9%)であった(図1)。発熱をワクチン接種0〜1日に限ってみると、49例( 2.8%)であった。痙攣が4例にみられ(全例熱性痙攣と診断された)、それぞれ接種5、7、11、16日後にみられ、うち2例が突発性発疹と診断されていた。局所反応なしは1,184例(67%)で、反応ありでは、発赤488例(28%)、腫脹308例(17%)、硬結166例(9.4%)であった(図2)。詳細を図3に示す。このうち直径11cm以上の発赤を認めた例が6例(11〜54cm)あった。

4.考 察
このHibワクチンの被接種者の健康状況調査は、接種医療機関が保護者に調査用紙を手渡して、接種日、性別、接種時年齢(月齢)、気づかれた全身反応と局所反応を記載してもらったものである。また保護者からの報告がなかったものの接種医によって副反応であると考えられたものも別個報告をもらった。調査期間は接種日(0日)〜27日までの4週間である。

接種時年齢は1歳未満が62%、接種回数は1回目が60%と最も多く、同時接種が29%で、うちDPTワクチンが最も多く96%を占めた。

全身反応なしが72%であったが、気道の炎症を思わせる咳・鼻汁が18%、発熱が14%、消化器症状の嘔吐・下痢が 7.4%にみられた。しかし、発熱を通常の不活化ワクチンに伴う副反応とみなされる接種後0〜1日に絞ってみると2.8%となり、みられた熱性痙攣4例も接種5、7、11、16日後であった。局所反応なしが67%であり、発赤、腫脹、硬結が28%、17%、9.4%にみられた。年齢を考慮したより詳細な解析を現在行っている。

札幌市立大学客員教授 富樫武弘

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