2009/10シーズン熊本県でのインフルエンザウイルスAH3亜型の分離
(Vol. 31 p. 103-104: 2010年4月号)

熊本県では2010年3月に2009/10シーズン初めてインフルエンザウイルスAH3亜型を4株検出した。

検体提供者は同じ保育園に通う3〜5歳の園児であり、この中の一人の園児が1月にA型インフルエンザに感染しており、今回も迅速診断キットでA型陽性であった。このため小児科病原体定点医が季節性インフルエンザを疑い、当研究所に検査依頼があった。

検査材料(鼻腔ぬぐい液)は2月25日〜3月1日にかけて5検体採取され、そのうちの4検体でリアルタイムPCR法およびコンベンショナルPCR法によりAH3亜型が確認された。

また、MDCK細胞によるウイルス分離を行ったところ、PCR法でAH3亜型陽性であった4検体中3検体からウイルスが分離された。このうちの2株でHA価が4HA以上になったため、国立感染症研究所から配布された2009/10シーズンインフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を実施した。その結果、0.75%ヒトO型赤血球を使用した場合のHI価は2株とも抗A/Uruguay/716/2007(ホモ価1,280)に対して80、抗A/California/7/2009pdm(同1,280)に対して<40、抗A/Brisbane/59/2007(同320)に対して<10であった。当研究所で昨シーズン分離された21株のAH3亜型の2008/09シーズン抗A/Uruguay/716/2007血清に対するHI価はホモ価に対して最高で4倍の差であったが、今シーズンの分離株は16倍の差となっており、昨シーズンの株に比較すると抗原性がかなり変化しているようである。

定点医からの情報によれば、AH3亜型が確認された地域での患者発生状況については、第10週の時点で流行が急速に拡大していることはないようだが、兄弟姉妹あるいは家族への感染を通して地域社会への拡大が懸念されるところである。

2010年に入りAH1pdmの流行は終息しつつあるが、今回熊本県で分離されたAH3亜型を含め、複数の都道府県で確認され始めているB型については、今後も病原体サーベイランスを強化しながら監視していく必要があると考えられる。

熊本県保健環境科学研究所 西村浩一 清田直子 原田誠也
しまだ小児科 島田 康

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