大阪府では2010年に入ってからエンテロウイルス71型(EV71)が検出されるようになり、無菌性髄膜炎を発症した4歳児の咽頭ぬぐい液および糞便から、また手足口病を発症した6歳児の咽頭ぬぐい液からEV71が検出された。最近になり、成人の手足口病患者からのウイルス検出を行ったのでその経過を報告する。
患者は38歳の勤労女性で、夫、子供(8歳と2歳)の4人家族である。2月23日、第二子の腕、臀部および大腿部に多数の小発疹が出現した。水疱も数個見られた。近医では感冒と診断された。25日には発疹がかさぶたとなり、その後消失した。25日、女性の手掌に1個の水疱が出現、口内炎も発症した。26日、手掌、足指、口内の水疱が増加した。27日、手掌の水疱は8個、口内の水疱は10個以上で、口内炎が悪化し、食物の摂取が困難となった。翌日以降、3月2日まで流動食以外の摂取は不可能であった。3日より症状が改善し、普通食を再開した。7日には水疱が完全に消失した。
本女性患者の第2病日の口内水疱ぬぐい液および第二子の第5病日の糞便からRT-PCRによりEV71が検出された。ウイルス分離は継続して実施中である。第二子の症状は非定型的であり、臨床的には手足口病と診断されなかったが、同時期には第二子が通園する保育所で手足口病の流行がみられていた。また、検出された両ウイルスのVP4領域(207bp)の塩基配列が100%一致したことから、女性患者は第二子から二次的に感染したものと考えられた。両名ともに予後は良好で、髄膜炎症状などはみられなかった。
成人の手足口病はまれであるが、皮膚症状はより重症となることがあるとされており、今回の発症事例はその典型であると思われた。
大阪府立公衆衛生研究所 山崎謙治 中田恵子