2010年2月中旬頃から広島市においては、定点医療機関からの手足口病の患者報告数が増加し、第11週には定点当たり2.96人に達した(図1) 1)。今回、手足口病患者6名の検査の結果、エンテロウイルス71型(EV71)が検出されたので報告する。
3月28日〜4月4日までに採取された手足口病患者(表)の咽頭ぬぐい液を4種類の細胞(HE、HEp-2、RD-18S、Vero)に接種した。RD-18SおよびVero細胞にエンテロウイルス様の細胞変性効果(CPE)を現したものを、一部は検体から直接RNA抽出後、VP4-VP2部分領域を目的とするsemi-nested-PCR法 2)でDNAを増幅したのち、ダイレクトシークエンスによりVP4-VP2部分領域(615bp)の塩基配列を決定した。BLAST検索により、98.0%の塩基配列相同性によりEV71と決定した。分離株間の塩基配列(615bp)は99.2〜100%一致した。2009年の分離株を合わせてVP4領域(207bp)で系統樹解析した結果、今回の流行株は遺伝子型C2に分類された(図2)。
EV71は無菌性髄膜炎や脳炎等の重篤な疾患の原因となる可能性があるため、今後の動向に注意が必要である。
文 献
1)広島市感染症情報センター:http://www.city.hiroshima.lg.jp/shakai/eiken/center.html
2)吉田 弘、他、IASR 30: 10-12,2009
広島市衛生研究所生物科学部
阿部勝彦 山本美和子 田中寛子 井澤麻由 伊藤文明 笠間良雄 吉岡嘉暁
広島市感染症情報センター
片岡真喜夫 磯野裕之 吉貞奈穂子