保育園で発生した腸管出血性大腸菌O26による集団感染事例―石川県
(Vol. 31 p. 165-166: 2010年6月号)

2009(平成21)年7月、当保健所管内のA保育園において腸管出血性大腸菌O26(VT1)(以下EHEC O26)感染症の集団発生事例があったので、その概要を報告する。

2009年(平成21年)7月22日午後、管内の医療機関から南加賀保健所に、3歳保育園児のEHEC O26による感染症発生届が提出された。

当保健所が患児の通園していたA保育園(園児242名、職員50名)において聞き取り調査を実施したところ、届出患児以外に3名の有症者がいることが判明した。濃厚接触者の検便を実施したところ、患児と同じクラスの園児7名、患者家族3名の計10名からEHEC O26が分離された(表1)。その後9月4日に感染者全員の菌陰性が確認された。

感染者11名の分離株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)解析を行った結果、分離株すべての遺伝子パターンが一致し、同一由来株であることが確認された。また、同時期の他地域での感染はなかった。

本事例では、菌陰性化確認の経過中に、再度菌が分離された園児が3名いた。その原因として抗菌薬に対する耐性を疑い、2名の患児(A、B)より分離された株について薬剤感受性試験を行ったところ、ABPC、PIPC、FOMについて薬剤耐性が確認された(表2)。この2名については医療機関へ薬剤感受性結果を報告し、処方の変更により、菌陰性化を確認した。また、残り1名についても、薬剤耐性を獲得していると推察されるので、医療機関へ情報提供を行い、処方の変更により、菌陰性化を確認している。

疫学調査の結果、園児の発生状況や、園児と同じ給食を喫食している職員の検便が陰性であったことから、給食による食中毒ではなく、保育所内での人から人への感染が推察された。また、感染源および感染経路を特定することはできなかったが、初発患児の発症から診断までに10日を要しており、この間に同じクラスの園児および家族への二次感染がおこったものと考えられる。

当保健所では患者宅を訪問し、感染予防の指導にあたるとともに、A保育園に対し、職員とともに園内の消毒作業を行うことで、消毒手技の確認および指導を行った。その結果、無症状保菌者の保育を実施したにもかかわらず、感染の拡大を防止することができた(図1)。

石川県南加賀保健所
河畑沙織 石黒春奈 中田恭子 四方雅代 田中宏明 湯谷幹恵 本庄峰夫 柴田裕行 安平真理子* 村本 隆* 佐藤日出夫*
(*前石川県南加賀保健所)

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