施設で集団発生した腸管出血性大腸菌感染症―京都市
(Vol. 31 p. 167-168: 2010年6月号)

2009(平成21)年9〜10月にかけて、京都市内の託児施設で腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7の集団発生があったので概要を報告する。

9月5日、医療機関から1名のEHEC感染症発生の届出があり、患者家族の検便を行ったところ、9月10日に、同一施設を利用する患者家族からEHEC O157が検出された。

9月12日には、別の利用者からもEHEC O157が検出されたことから、同施設内での集団感染の可能性が示唆された。施設職員、施設利用者および患者家族の検便を実施したところ、施設利用者および患者家族から最終的に25名の菌陽性が判明した(表1)。また、担当保健所では当該施設および患者に対して消毒および衛生指導を行い、感染拡大の防止に努めた。

10月23日、EHEC O157陽性者全員の菌陰性確認により集団発生の終息とした。

検査対象者は表1のとおり、施設職員、施設利用者(103名)および菌陽性者の家族と接触者(42名)を検査対象とした。施設利用者、職員および患者家族の検便は167件であった。

検査の結果、医療機関受診者を含むEHEC陽性者は25名であり(表1)、有症者は5名であった。有症者の症状は4名が下痢および血便、1名は軟便のみで軽快した。溶血性尿毒症症候群(HUS)などの重症者はいなかった。施設職員からの菌検出が無かったこと、患者発症時期に差があることから、食品を介した食中毒の可能性は否定された。

医療機関で検出された菌も含め、検出菌はすべてO157:H7 VT1&2陽性であった。

パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)の一部を図1に示した。PFGEによって3グループに分けられ、Aグループは17株、Bグループは6株、Cグループは2株が含まれている。Z家族においては、家族内でPFGEパターンが異なっていた。

初発患者は8月31日に下痢を発症しており、症状があるまま翌日早退時まで施設利用を続けたため、他者への感染が拡大したと考えられる。施設利用者における菌陽性者は施設全体から発生しており(表1)、感染経路の特定はできなかった。また、患者家族内にも同一施設利用者がおり、家族内における感染の可能性も示唆された。

京都市衛生環境研究所微生物部門
平野 隆 井本幸子 渡辺正義 安武 廣

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