同一食肉解体施設由来の牛肉に関連した志賀毒素産生性大腸菌(STEC)の複数州にわたる2つの集団事例、2008年―米国
(Vol. 31 p. 179-180: 2010年6月号)

2008年5〜8月、複数州にわたるSTEC O157の集団事例が2件発生し、各々別のパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンを示した。州および地域の保健・農業担当部、CDC、農務省食品安全検査局(FSIS)が調査を行った結果、この2事例は同一の食肉解体施設に由来する牛肉の汚染が原因と判明した。各事例について、食品喫食の疫学解析、微生物検査、食品流通の遡り等の調査概要を以下に記した。

事例1:2008年6月14日、オハイオ州衛生当局が同一PFGEパターン(パターン1)を示す7株のSTEC O157のクラスターを探知した。ほぼ同時期に、ミシガン州衛生当局がパターン1のSTEC O157感染者の聞き取り調査を行い、発症前に全国チェーンの食料雑貨店(チェーンA)で購入した挽肉を摂取していた者が複数確認された。その後、州、地域、CDC、FSISの合同調査により、12州で64例(1〜71歳)の感染者が確認された。症例対照研究により、チェーンAで購入した牛挽肉が有意な関連を認めた。この牛挽肉の遡り調査の結果、ネブラスカ州の食肉解体施設由来の肉と判明し、6月25日にチェーンAが販売した全牛挽肉のリコールを、6月30日に食肉解体施設が牛挽肉製品のリコールを全国的に行うこととなった。

事例2:7月28日、CDCが同一PFGEパターン(パターン2)を示すSTEC O157の注意喚起を8州に対し行った。CDC等の合同調査により、8州で35例(1〜70歳)の感染者が確認された。聞き取り調査の行われた30例中17例(57%)が、2つの食料雑貨店(チェーンBまたはチェーンC)のいずれかで購入した牛挽肉を摂取していた。牛挽肉の遡り調査の結果、感染源の肉の汚染は事例1と同じ食肉解体施設に由来することが判明し、7月28日にチェーンBが、8月8日にチェーンCが牛挽肉製品のリコールを開始した。

食肉解体施設における対応:FSISがこの食肉解体施設の調査を行ったところ、処理工程において有効なSTEC対策がとられておらず、リコールされた肉は不衛生な条件下で製造されていたと結論づけられた。その結果、FSISは施設内の牛肉検査方法の評価を行い、牛肉製品の汚染が検出可能となるような検査法の修正を指導した。また、食肉解体施設は処理工程の是正処置・予防対策を実施した。

(CDC, MMWR, 59, No.18, 557-560, 2010)

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