2009(平成21)年7月に市原保健所管内高校のサマースクールで新型インフルエンザ集団発生があった。この事例は国のクラスターサーベイランス開始直後であったため、集団感染として患者調査および濃厚接触者追跡調査を行い、感染経路、家族内感染率、発熱期間、潜伏期などについての検討を行った。
高校の生徒数は871名で、7月18日(土)に終業式を行い、19日から夏季休暇に入った。サマースクールには生徒238名が参加し、20日にバス7台で移動後に長野県の2つのホテル(A、Bホテル)に宿泊し、21日より発熱者が出現し、地元の医療機関で新型インフルエンザと診断された。
学校の患者調査では、終業式前の13日〜17日に1年6名、2年2名、3年2名が発熱で欠席していたことが判明したが、新型インフルエンザの届けはなかった。19日〜28日の期間に発熱があり、医療機関で新型インフルエンザと診断されたのは、サマースクール参加者生徒79名、同教師1名、不参加者生徒12名の合計92名(PCR診断10名、迅速キット診断72名、臨床診断10名)であった。これらの行動調査と流行曲線(図)から、夏休み直前にすでに1年を中心に学校で新型インフルエンザが発生しており、ここでの感染者から、サマースクール不参加者の野球部員には18、19日に終日高校野球夏季大会観戦で(図-1)、サマースクール参加者の1年1〜2組(患者数/参加者=37/62 )には20日のバスで(図-2)、1年3〜8組(同=29/92)には21日のホテルで(図-3)、さらに2〜3年(同=13/84)には22日のホテルで(図-3)近接者からの飛沫感染によって拡大したものと推察された。
また、市原市内在住の濃厚接触者追跡調査では発症者29名の家族102名のうち7名に二次感染が見られ、この二次感染者である中学生の弟が参加した野球部の部活動を通して三次感染者7名が24日〜26日に、さらに、三次感染の家族25名のうち四次感染者2名が25日〜27日に発生した(図-4)。これら127名の家族内の感染率は7.0%で、その内訳は、母親3名(母親の8.5%)および小中学生の妹弟6名(妹弟の23.0%)で、祖父母、父親、高校生以上の兄弟には感染はなかった。家族感染が妹弟、母親に偏ったのは接触が濃厚であったという社会的理由に加えて、年長者のインフルエンザに対する高い免疫力という年齢的理由が考えられた。また、一次感染の生徒29名の有熱期間は平均2.5日(範囲1〜4日)で、二〜四次感染の家族等23名の潜伏期は平均2.3日(範囲1〜4日)で、これらは季節型と同等と考えられた。
謝辞:調査にご協力いただいた長野県北信保健福祉事務所、千葉県内各保健所、また、高校関係者に深謝いたします。
千葉県市原健康福祉センター
一戸貞人 塚田真澄 石橋桃子 岩井亜矢子 小島麻美 馬場千秋 安田典代
千葉県衛生研究所ウイルス研究室
小川知子 丸ひろみ 高木 素 福嶋得忍 篠崎邦子