鹿児島県沖永良部島の知名町で、新型インフルエンザウイルスA/H1N1pdmが原因とされる集団発生を認めたのでその概要を報告する。
2010年5月12日に、沖永良部島を管轄する保健所に、島内医療機関から「インフルエンザ様疾患の患者が多数受診しており、迅速検査の結果、A型が確認されているので、新型インフルエンザ集団感染ではないか」との情報提供があった。当該保健所より行政検査として遺伝子検査の依頼が当センターにあったので、この概要について報告する。
鼻腔ぬぐい液10検体が搬入され、14日にリアルタイムRT-PCRを実施した。結果は、10検体中9検体から新型インフルエンザウイルスA/H1N1pdmの遺伝子が検出された。10人の症状や共通点は(表1)のとおりであり、38℃以上の高熱と、咳、鼻汁がほぼ全員に認められた。年齢層は6〜56歳と幅があった。56歳の社会人以外は、全員、新型インフルエンザの予防接種を接種済みであった。
沖永良部島には、和泊町と知名町という二つの町があるが、今回発生が認められたのは知名町の住民であったことから、限られた地域での集団感染が疑われた。5月18日には、同じく、知名町の小学校でインフルエンザ様疾患の集団発生があり、学年閉鎖の措置がとられている。14日に検査した患者の中にも、同小学校の生徒が4名含まれていたことから、18日の集団発生も新型インフルエンザウイルスA/H1N1pdmに起因した事例と思われた。感染経路は定かではないが、沖永良部島の高校生が、沖縄中部において合宿し、帰島する船中で39℃の発熱があったとの情報を得ている。
ワクチン接種者が多数感染していることから、遺伝子の解析などを行い、今後の発生動向に注意する必要がある。
鹿児島県環境保健センター
上村晃秀 御供田睦代 蓑田祥子 濱田まどか 吉國謙一郎 藤崎隆司 佐久間弘匡 三谷惟章