ヒトにおける初のUsutu virusの神経系感染の症例、2009年8〜9月―イタリア
(Vol. 31 p. 215: 2010年7月号)

Usutu virus(USUV)は、フラビウイルス科フラビウイルス属の節足動物媒介ウイルスの1種で、日本脳炎ウイルス(JEV)やウエストナイルウイルス(WNV)などのヒトの病原体と密接に関連する日本脳炎ウイルスのグループに属する。最近10年間、USUVは中央ヨーロッパで、脳炎、心筋変性、肝臓・脾臓壊死を呈する種々の鳥で検出されているが、ヒトでの重篤、致命的な疾患との関連は今まで知られていなかった。

2009年5月に60代の女性がびまん性大細胞型リンパ腫のため結腸半切除術、化学療法6クールを受けた後、静止時振戦を伴う39.5℃の発熱で発症し、髄膜脳炎が疑われた。急性期に採取された脳脊髄液はサイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス1型/2型、EBウイルス、WNVなどのウイルスに陰性であったが、フラビウイルス属のNS5領域特有の遺伝子がheminested RT-PCRで陽性となり、増幅遺伝子塩基配列のBLAST解析の結果、USUVのブダペスト株とウィーン株に98%相同であった。ステロイド治療が開始され解熱し、神経学的症状(主に静止時振戦)はlevodopaとcarbidopaの投与により改善した。

これはUSUVによるヒトにおける初の神経系疾患の症例であるが、基礎疾患とその治療(特にrituximab)のために患者が免疫抑制状態にあったということがUSUVの感染・発症に重要な役割を演じたかもしれない。患者の居住地域でUSUVが媒介蚊とともに環境に適応しているので、蚊に刺されて感染した可能性がありうる。

(Euro Surveill. 2009;14(50) : pii=19446)

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