同所性肝移植をうけた患者のUsutu virus感染、2009年8〜9月―イタリア
(Vol. 31 p. 215: 2010年7月号)

2009年8月10日に、40代の女性がエジプトでの休暇からイタリアに帰国して数日後に血栓性血小板減少性紫斑病を発症し、9月4日までに18回の血漿交換を受けた。女性は9月14日に、39.5℃の発熱、頭痛、発疹、肝逸脱酵素の軽度上昇を示して、18日に継続する発熱と頭痛のために入院したが、数日中に劇症肝炎と神経機能の障害が急速に進行し昏睡に陥った。検査診断でA型、B型、C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルスは陰性であった。同所性肝移植が実施され、その2週間後に、患者は脳神経と四肢の運動機能とともに意識低下が徐々に回復した。9月24日に、手術直前に上記の患者から採取された血漿検体は、核酸増幅検査NAAT-TMAによるウエストナイルウイルス(WNV)検査で弱陽性、WNVエンベロープ遺伝子をターゲットとしたリアルタイムRT-PCRで陰性だった。主要な病原性フラビウイルスのPCRによる遺伝子検出およびheminested RT-PCRによって得られた増幅遺伝子の塩基配列は、Usutuウイルス(USUV)の塩基配列と98%の高い相同性が認められた。一方、WNV遺伝子配列には80%、日本脳炎ウイルス遺伝子配列には79%の相同性であった。USUVはその後Vero E6細胞で分離され、分離株から得られた塩基配列は、血漿検体から得られたものと同一だった。

これは、USUVが関与したヒトにおける2例目の報告となる。現在、治療(血漿交換)が感染源となり得たかどうか、あるいは、蚊に刺されたことによって自然に感染したのかどうかを明らかにするために、この患者の血漿交換に使われた献血者の血清学的調査を実施している。さらに、USUV血症期のウイルス量と持続期間を定量化し、肝疾患におけるUSUV関与の可能性を評価するために、同じ患者から採取されたさらなる血漿や組織標本中のUSUVの存在を確認するために研究が進行中である。

(Eur Surveill. 2009;14(50) : pii=19448)

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