新型インフルエンザ(A/H1N1)対策について
(Vol. 31 p. 251-253: 2010年9月号)

1.はじめに
今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)の国内での流行状況については、2009(平成21)年8月中旬(10日〜16日の週)に流行入りをし、11月末(23日〜29日の週)に流行のピークを迎えた。その後、インフルエンザの患者報告数は減少に転じ、2010(平成22)年3月末には厚生労働大臣が、「今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)の最初の流行(いわゆる「第1波」)は、沈静化している」との旨の発表を行った。

平成22年8月10日には、WHO(世界保健機関)が、専門家による緊急委員会の結果を踏まえ、今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)における現在の世界的な流行状況を「ポストパンデミック」とする旨の声明の発表を行った。

これらを踏まえ、平成22年8月27日に政府の新型インフルエンザ対策本部が開催され、「新型インフルエンザ(A/H1N1)に対する今後の取組」が決定されるとともに、政府の新型インフルエンザ対策本部は廃止となった。また、厚生労働省としては、現在の新型インフルエンザの流行状況について、わが国においてもパンデミックの状況は去ったと考えられるが、新型インフルエンザ(A/H1N1)のウイルスは引き続き存在しており、今年度(2010/11シーズン)における流行的発生に対して警戒を要する状況であるとの大臣発表を行った。

以下、平成21年9月以降、新型インフルエンザ(A/H1N1)に対して、政府および厚生労働省がこれまで行ってきた対策のうち、主な事項を記載する。

2.政府の方針および厚生労働省の指針について
(1)平成21年10月1日
平成21年8月19日に厚生労働省が、本格的な流行期に入った旨の宣言を行って以降、新型インフルエンザ(A/H1N1)の感染が拡大してきた。このため、感染者の急激な増大を可能な限り抑制し、社会活動の停滞や医療機関の負担を可能な限り減らし、重症者への医療を確保する観点から、平成21年10月1日に開催された政府の新型インフルエンザ対策本部において、これまでの政府全体の対策の方針である「基本的対処方針」を改定した。

また、同日、死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこと、およびそのために必要な医療を確保することを目的として、新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種を行う必要があることから、ワクチンの接種や確保、優先順位、費用負担等に関する基本的な考え方を示した「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種の基本方針」を決定した。

厚生労働省では、「基本的対処方針」の見直しの背景や、先行して感染が拡大していた沖縄県における経験等を踏まえ、これまでの厚生労働省の対策の方針である「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針」の改定を10月1日付けで行った。

(2)平成21年12月15日
新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種回数の見直しにより、健康成人への接種の見通しが立ったこと等から、新型インフルエンザ患者の診療に従事する医療従事者や基礎疾患を有する者等をはじめとした優先接種対象者だけでなく、健康成人への接種も進めることとし、これに伴い低所得者に対する費用軽減措置について、健康成人を含むすべての低所得者に対して費用軽減措置を講じるため、政府の新型インフルエンザ対策本部において、「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種の基本方針」の改定を行った。

(3)平成22年8月27日
平成22年8月10日に出されたWHOのポストパンデミック声明等を受け、国内における対応を決定するため、政府の新型インフルエンザ対策本部が開催された。

そこでは、今回の新型インフルエンザ(A/H1N1)については、政府全体として緊急的かつ総合的に対処すべき事態は終息しつつあるものと判断し、通常の感染症対策として、厚生労働省において対策に万全を期すこと等を明記した「新型インフルエンザ(A/H1N1)に対する今後の取組」を決定した。また、これを受け、平成21年4月28日に設置した政府の新型インフルエンザ対策本部については、「新型インフルエンザ対策に関する政府の対応について」(平成19年10月26日付け閣議決定)に基づき廃止した。(※)

(※)厚生労働省内の新型インフルエンザ対策推進本部は引き続き継続し、対策に万全を期していくこととしている。

厚生労働省では、今後の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策について、WHOの勧告(警戒の継続のほか、サーベイランス、ワクチン接種、医療提供の実施に努めること)や国内における再流行の可能性が続いていること等を踏まえ、感染症対策上、国内における再流行への警戒を怠らず、まん延予防等に万全を期するため、引き続き、必要な医療体制の構築や、感染予防の呼びかけ等に努めること、今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)に対するワクチン接種を、今年度は引き続き応急的に行うことを決定した。

また、流行予測等のサーベイランス等も継続して行い、その状況等を踏えた上で、季節性と異なる大きな流行等の特別な事情が生じない場合には、今年度末を目途に、感染症法に基づき、「新型インフルエンザ等感染症」と認められなくなった旨の公表をし、通常の季節性インフルエンザの対策に移行することを決定した。

3.昨年から実施してきた新型インフルエンザ(A/H1N1)対策の総括について
新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議
今般発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)に対して厚生労働省が講じてきた対策の総括を行い、今後の新型インフルエンザ(A/H1N1)の再流行時の対応および鳥インフルエンザ(H5N1)発生時の対策の見直しに活かすため、新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議を、平成22年3月31日に厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部の下に設置を行った。

総括会議では、水際対策、公衆衛生対策、サーベイランス、広報体制、医療体制、ワクチン等について有識者等を交え、7回の議論を行い、その報告書は、平成22年6月10日に取りまとめられた(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/dl/infu100610-00.pdf)。

今後、総括会議の提言等を踏まえ、新型インフルエンザ対策行動計画やガイドライン等の見直しに取り組むとともに、組織体制等の強化等に活かすこととしている。

4.終わりに
今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)については、引き続き、国内での再流行の可能性は続いていることや、新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議における水際対策や医療体制、ワクチン体制等、様々なご意見やご指摘もいただいていることから、厚生労働省としては、引き続き、今般の新型インフルエンザ(A/H1N1)の国内再流行への警戒を怠らず、万全を期すとともに、今回の経験を糧にして、今後、高病原性の新型インフルエンザウイルスが発生した場合に活かしていくことが重要と考えている。

引き続きご関係者の皆様のご理解・ご協力をお願いしたい。

厚生労働省結核感染症課

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る