2010年の高知県におけるエンテロウイルス71型の検出状況
(Vol. 31 p. 272-273: 2010年9月号)

2010年の高知県におけるエンテロウイルス71型(EV71)の検出状況を報告する。

検出方法については、患者検体からのEV71遺伝子検出と、培養細胞によるウイルス分離を併用した。患者検体からのEV71遺伝子検出については、谷脇らの方法1) によるエンテロウイルスの5’UTR領域に対するPCRを行い、陽性となったものについて、山崎らの方法2) で、EV71のVP4-2領域に対するPCRにより同定した。ウイルス分離では、Vero、LLC-MK2、FL、RD-18Sの4種類の細胞を用い、エンテロウイルスに特徴的なCPEを形成したものについて、愛媛県作製の抗EV71血清で中和試験を行った。これらのうち、手足口病患者検体3件、無菌性髄膜炎患者検体1件については、Nixらの方法3) によるVP1領域のsemi/nested PCRを行った後ダイレクトシークエンスにより塩基配列を解読し、301bpについて系統樹解析を行った。

EV71は3月1件、4月1件、5月30件、6月37件、7月18件、8月(22日現在)5件、計92件から検出された。陽性例の臨床診断名は手足口病79件、ヘルパンギーナ3件、無菌性髄膜炎3件等であった(表1)。手足口病患者検体からは、84.0%(搬入検体94件中79件)でEV71が検出されており、本県の手足口病の原因ウイルスは大部分がEV71であったことが示された。また、無菌性髄膜炎検体は13件搬入されたが、ウイルスを検出できたものは4件あり、うち3件をEV71が占めた。

EV71の遺伝子の系統樹解析の結果では、遺伝子型は4検体ともにC2型に分類され、これらの相同性は99.7〜100%であった(図1)。

感染症発生動向調査において、2010年の高知県の定点当たりの手足口病患者は第17週で上昇し始め、第28週で13.33人とピークを迎えた。現在(第33週)では下降しているものの、医療圏によっては本県の注意報基準値(2.00人)を超過しているところもあり、いまだ注意を必要としている。

参考文献
1)谷脇 妙, 他, 高知衛研報 54, 29-34, 2008
2)山崎謙治, 他, 感染症学雑誌 75, 909-915, 2006
3)Nix WA, et al ., J Clin Microbiol 44: 2698-2704, 2006

高知県衛生研究所 細見卓司 鍋島 民 下司 勲 松本道明 今井 淳

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