呼吸器感染症、熱性けいれんの乳幼児からのエンテロウイルス68型の検出―大阪市
(Vol. 31 p. 300: 2010年10月号)

2010年6〜8月の期間に呼吸器感染症由来10検体、熱性けいれん由来1検体からエンテロウイルス68型(EV68)を検出したので報告する。

EV68の月別検出数は、6月2例、7月6例、8月3例であった(2010年8月16日現在)。患者情報をに示した。いずれの検体もVero、RD-18S細胞を用いたウイルス分離検査は陰性であった。そのため、ライノウイルスおよびエンテロウイルスの遺伝子検査(EVP4、OL68-1 プライマー)を実施した1) 。その結果、すべての検体について、610bpに特異的増幅産物を認め、ライノウイルス(530bp)、エンテロウイルス(650bp)とは異なっていた。ダイレクトシークエンスによりVP4遺伝子(207塩基)を解読し、BLAST(http://blast.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)による相同性検索を行った結果、すべてEV68(37-99 isolate, GenBank No. EF107098)に高い相同性 (94.7〜95.7%)を示した。一方、VP1遺伝子(927塩基)を用いたBLAST検索についてもすべてEV68(MD02-1 strain, GenBank No. AY426491)に高い相同性(97.0〜97.6%)を示したことから、前述の11検体について、EV68陽性と判定した。

EV68は、1962年にアメリカにおいて呼吸器疾患の子供から発見され2) 、呼吸器感染症に関与することが報告されている3) 。その後の研究により、EV68は、ヒトライノウイルス87型と同一であることが明らかにされた1) 。日本国内では、例年、EV68の検出が報告されているが、その数は、2006年2例、2007年8例、2008年0例、2009年4例、2010年9例(2010年8月25日現在)と多くない(https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data60j.pdf)。しかしながら、今夏については、大阪市のみで11例検出されていること、7月に検出数が増加していることから、EV68が流行している可能性が考えられた。

 文 献
1) Ishiko, et al ., Intervirology 45: 136-141, 2002
2) Schieble, et al ., Am J Epidemiol 85: 297-310, 1967
3) Oberste, et al ., J Gen Virol 85: 2577-2584, 2004

大阪市立環境科学研究所
改田 厚 久保英幸 関口純一朗 入谷展弘 後藤 薫 長谷 篤
中野こども病院 大町太一 舟木克枝 圀府寺 美
大阪市立総合医療センター 天羽清子 塩見正司
大阪市立住吉市民病院 中野嘉子 外川正生

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