2009/10シーズンの夏季(第27〜35週)にインフルエンザの小流行が認められ、新型インフルエンザA(H1N1)pdm(以下、AH1pdm)、AH3亜型、B型が検出されたので概要を報告する。
患者発生状況:2009/10シーズンは、前シーズンのAH1pdm夏季流行が持続した状態での開始となり、定点当たりの報告数は第53週に54.88人でピークとなった後、第18週は0.17人でほぼ終息していた(図1)。しかし、第27〜35週(7/5〜9/5)は0.53〜1.17人の範囲で推移し、全国の0.02〜0.04人と比べると約27倍であった。年齢別でみると0〜9歳が108人と最も多く、次いで、10〜19歳106人、20〜29歳73人、30〜39歳47人、60歳以上30人、40〜49歳21人、50〜59歳16人の順であった。
ウイルス分離状況:医療機関にて迅速診断キットでインフルエンザ陽性を示した患者の咽頭ぬぐい液18検体を検査材料とし、リアルタイムPCRとMDCK細胞によるウイルス分離を実施した。PCRの結果は18例すべて陽性を示し、その内訳はAH1pdm 5例、AH3亜型4例、B型9例であった。ウイルスは17例で分離され、それらについて国立感染症研究所から配布された2009/10シーズンキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%モルモット赤血球を使用)を実施した。AH1pdm分離株は抗A/California/7/2009(ホモ価1,280)に対し、HI価80が1株、320が1株、640が2株、1,280が1株であった。AH3亜型分離株については、抗A/Uruguay/716/2007(同1,280)に対して2株はHI価80を示し、1株はHI価<10で反応を示さなかった。B型分離株は、抗B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)(同320)に対してHI価320が3株、640が4株、1,280が2株、抗B/Bangladesh/3333/2007(山形系統)(同1,280)に対して全9株がHI価<10であった。
まとめ:沖縄県では2005年以降、夏季の流行が認められるが、2009/10シーズン夏季はピーク時に1.77人で、例年と比較すると小規模な流行であった。2008/09シーズン第32週(8/3〜8/9)以降、検出されたウイルスの型はAH1pdmのみであったが、2009/10シーズン第28週(7/12〜7/18)よりB型、AH3亜型が検出され始め、現在AH1pdmを含む3つの型が混在している。特にAH3亜型の分離株は、HI試験で低反応性または反応がないことから、ワクチン株とは抗原性が異なることが考えられた。B型については第29週より全国での報告がなく(IDSCインフルエンザウイルス分離・検出速報 2010/08/31現在)、本県に特徴的な発生と考えられた。夏休みが明け、学校が再開されたことから集団発生に注意が必要であり、今後もウイルスの動向に注視していきたい。
沖縄県衛生環境研究所
喜屋武向子 平良勝也 岡野 祥 仁平 稔 糸数清正 久高 潤
沖縄県感染症情報センター 古謝由紀子
沖縄県福祉保健部医務課 平良 知 棚原憲実
沖縄県中部保健所 石上五世 松野朝之
沖縄県中央保健所 上原健司 国吉秀樹
沖縄県南部保健所 田仲康雅 小林孝暢