2010年9月、茨城県内の小学校において、インフルエンザウイルスAH1pdmによる集団感染が発生したので報告する。
茨城県竜ヶ崎保健所管内の小学校で2010年9月1日の新学期開始日よりインフルエンザ様疾患の発症者が相次ぎ、5学年(26名中9名発症)において9月8日から5日間学年閉鎖措置がとられた。学校全体では131名中20名発症した。また、発症者にはいずれも渡航歴はなく、昨年はインフルエンザに罹患した者はいなかった。
茨城県衛生研究所には9月8日にインフルエンザウイルス検査の依頼があり、うがい液8検体が搬入された。これらについてMDCK細胞を用いて培養を開始するとともに、リアルタイムPCRを実施した。リアルタイムPCRの結果、全検体からswH1遺伝子が検出された。検体提供者8名の医療機関での迅速検査の結果は、いずれもインフルエンザウイルスA(+)であった。また、8名の臨床症状やワクチンの接種状況については表のとおりであるが、8名中5名は、新型インフルエンザワクチンを受けていた。
なお、本事例を除き、茨城県衛生研究所では今(2010)年4月以降インフルエンザウイルスが13件検出されている。それらはすべて散発例であり、AH1pdmが10件(うち渡航歴があるのはオーストラリア1件、タイ2件)、AH3が2件(フィリピン1件)、B型が1件(中国1件)である。
本事例は、茨城県内で今季初めての臨時休校措置となる集団感染であったが、その後、本事例がおきた小学校の近隣の小学校からも臨時休校措置の報告があった(PCR検査未実施)。県内では散発例からインフルエンザAH3亜型も検出されていることから、新型インフルエンザAH1pdmに限らず、今後の発生動向を注視する必要がある。
茨城県衛生研究所 土井育子 永田紀子 笠井潔 増子京子 原 孝 杉山昌秀
茨城県竜ヶ崎保健所 大竹美記 益子佳和 岸 恵理