ノロウイルス陽性となった調理従事者の陰性確認検査―東京都
(Vol. 31 p. 319-320: 2010年11月号)

2009年5月〜2010年1月にかけて東京都内で発生した胃腸炎集団発生のうち、調理従事者からノロウイルス(NoV)が検出された事例について行った陰性確認試験成績を報告する。NoV検査は、厚生労働省通知によるリアルタイムPCR法によって行った。また、遺伝子型は、NoVカプシド領域のプライマーG2SKF/G2SKRを用いた増幅産物から塩基配列を調べ、系統樹解析によって決定した。

陰性確認のために被検材料が搬入された10事例の概要(表1)を示した。集団事例の推定原因食品は飲食店の食事(4事例)、披露宴・会食料理(4事例)、仕出し弁当・ケータリング(2事例)であり、NoV陽性となった調理従事者合計28名を対象とした。検出されたNoVの遺伝子型はGII/2が1事例、GII/4が7事例、GII/7が1事例、GII/2とGII/13の同時検出例が1事例であった。

調査対象とした調理従事者の健康状態は全員が良好であったため、感染日の特定ができない。ここでは、推定原因食品が提供された日を基点とし、経過日数で示した。NoVが検出された28名の調理者について、原因食品が提供されてから4日目〜8日目までに初回検査が行われて陽性となり、陰性確認試験を1回から10回実施した。1回で陰性化した調理者が14名、2回3名、3回6名、4回2名、5回2名、10回1名であり、平均2.4回の陰性確認試験が実施された。また、NoV陰性が確認されるまでに要した日数を調査した結果、11日2名、12日と13日各1名、14日2名、16日4名、17日6名、18日1名、21日3名、24日1名、26日2名、33日・34日・47日・48日・53日各1名、平均21.9日であった。11〜21日目までに28名のうち20名(71.4%)が陰性化していたが、5名(17.9%)では1カ月以上を要した(図1)。この5名から検出されたNoVの遺伝子型はGII/4が4例、GII/7が1例であった。

今回の調査では、調理従事者の71.4%では3週間以内でNoVは検出されなくなったが、17.9%では陰性確認まで1カ月以上の長期間を要した。胃腸炎集団発生の再発防止のために、調理従事者の陰性確認の重要性が改めて確認された。今後、長期間にわたってNoVが排泄され続ける事例についてウイルス側・宿主側両面から検討を進める必要性が示された。

東京都健康安全研究センター微生物部ウイルス研究科
林 志直 秋場哲哉 森 功次 赤松紀子 江村早苗 永野美由紀

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