2.避難所における巡回指導と感染症リスクアセスメント
震災直後から、宮城県とともに巡回指導を行うとともに、行政担当者や巡回医療団の協力のもと、合計423カ所の避難所において3月末日までに感染症リスクアセスメントを行った(表1)。
避難者同士が1m以上距離を保つことができたのは全体の35%であり、28%が隔離場所の確保ができなかった。300名以上の大規模避難所では、大人数が密接に収容されるとともに、行政職員の対応が困難である傾向がみられた。避難所では換気は積極的に行われているものの、パーテーション等の間仕切りの設置は少なかった。
給水車による飲用水の確保は可能であるものの、62%に水道の未復旧がみられ、手洗い、清掃、食品衛生のための十分な水の確保は困難であった。上下水道の復旧に伴い衛生環境は大きく改善する傾向があった。
速乾性アルコール手指消毒薬等は90%以上の施設で充足していたものの、各種物品のより積極的な調達や衛生環境の確保は、自治の状況や経験者の有無に依存していた。
また、インフルエンザ等の発症事例等もあり、避難者、支援者に対する啓発が必要であった。
3.まとめ
今回の大震災にあたり、インフルエンザや感染性胃腸炎などによる散発事例、震災に関連したレジオネラ症や破傷風患者がみられたものの、避難者、支援者をはじめとする多くの方の多大なる尽力により、感染症対策を行うことが可能であった。
このような大規模災害にあたっては、日頃から地域における行政・医療機関・大学などの専門機関との連携が極めて重要であり、今後もより一層推進する必要があると考えられた。
東北感染症危機管理ネットワーク・東日本大震災感染症ホットライン
(http://www.tohoku-icnet.ac/shinsai/hotline.html)
東北大学大学院感染症診療地域連携講座 國島広之 具 芳明 山田充啓
東北大学大学院内科病態学講座感染制御・検査診断学分野
猪股真也 石橋令臣 金森 肇 遠藤史郎 青柳哲史 八田益充 徳田浩一 北川美穂 賀来満夫
東北大学大学院臨床微生物解析治療学 新井和明 矢野寿一 平潟洋一