福島県県南地域における避難所サーベイランス
(Vol. 32 p. S7: 2011年別冊)

東日本大震災発生後、避難所における集団生活において、感染症の発生リスクは高い状況であった。そこで、当地域において国立感染症研究所感染症情報センター(感染研情報センター)が開発した避難所感染症サーベイランスを導入し、避難所の感染対策を実施したので報告する。

当地域の最大避難者数は約2,600名、延べ対象巡回避難者数は約18,000名であったが、当所は各避難所巡回を3月13日から、避難所感染症サーベイランスを3月31日から開始した。ID・パスワードにより当所から感染研情報センターのホームページに入り、避難所における感染症の症候群情報を9分類した急性消化器症状、インフルエンザ・インフルエンザ様症状、急性呼吸器症状(インフルエンザ以外)などの有症状者の情報を収集し、画面上に入力した。入力後リアルタイムに症状別等の地図やグラフが閲覧可能となり、該当有症者数の経時的推移を瞬時に把握できた。避難所Aでは5月に感染性胃腸炎を早期探知し、直後より介入し、5家族6名の発症までに拡大防止した。避難所Bでは5月に急性呼吸器感染症約30名の集団発生事例を早期察知したため、当所が直接頻回巡回するなど介入を強めて終息した。さらに同様に7〜8月には計23名の急性呼吸器感染症が発症し、6名中4名のパラインフルエンザ3と4名の肺炎球菌などが検出されたが、医療機関との連携も強化して終息した。実際に感染症の早期探知システムとして活用できただけでなく、感染症集団発生を早期探知し、迅速で適確な環境衛生、手指衛生、マスクの着用、衝立、隔離等、状況に応じた感染症対策を直接介入することができた。

本保健所地域において実践されてきた、感染研情報センターが感染症情報を評価・分析し、保健所等に各種情報を還元する双方向の避難所感染症サーベイランスの体制は、避難者の感染症集団発生等の早期探知・早期介入として有効であると考えられる。

福島県県南保健福祉事務所 遠藤幸男

別冊の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る