麻疹風疹定期接種接種率調査(2009年度最終全国集計結果)
(Vol. 32 p. 39-41: 2011年2月号)

2012年度までにわが国から麻疹を排除することを目標とした麻疹排除計画において重要な核となる「予防接種の徹底」に関連し、麻疹風疹混合ワクチン定期接種第1期〜第4期までの2009年度接種率に関して概説する。第1期〜第4期までの2008年度と2009年度の結果は表1にまとめた。

1)第1期
2009年度の全国最終接種率は、93.6%であり、2008年度と比較して0.7ポイントの低下で、目標とする95%には至らなかった。最も高かったのは富山県96.7%、最も低かったのは青森県87.2%であった。95%以上を達成したのは、2008年度が47都道府県中16都道県であったのに対し、2009年度は9道府県という結果であった(図1)。2008年度との比較で、最も接種率が上昇したのは秋田県6.1ポイント(2008年度88.2%→2009年度94.2%)、最も低下したのは青森県−7.1ポイント(2008年度94.3%→2009年度87.2%)であり、28都府県において昨年度より接種率が低下していた。2009年度第1期対象者における未接種者数は、全国で15,663人であった。

1回目の接種として最も重要と考えられる第1期の接種においては、「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレゼントに」のキャッチフレーズとともに、保護者に対して、自治体とかかりつけ医が連携した勧奨を徹底し、さらなる接種率の向上が必要と考えられた。

2)第2期
2回接種導入4年目にあたる2009年度の第2期全国最終接種率は92.3%であり、前年度91.8%より 0.4ポイント上昇した。最も高かったのは秋田県97.1%、最も低かったのは鹿児島県87.8%であった。95%以上の接種率を記録していたのは8県であり(図1)、昨年度の10県より減少していた。昨年度と比較して接種率が最も上昇したのは和歌山県 2.7ポイント(2008年度92.1%→2009年度94.7%)、最も低下したのは佐賀県− 3.2ポイント(2008年度96.3%→2009年度93.1%)であり、15県において昨年度より接種率が低下していた。2009年度第2期対象者における未接種者数は、全国で30,362人であった。

第2期接種率向上のカギとしては、就学時健診の際の個別勧奨で、保護者がすぐに接種行動につなげられるよう、いつまでにどこで接種を受けなければならないか等をより具体的に提示して指導すること、さらに、学校への接種済み証明書の提出を求める取り組みの導入等が挙げられる。特に後者に関しては、今後、国レベルでの実施を積極的に検討する必要がある。

3)第3期
導入2年目である2009年度の全国最終接種率は、前年度より0.8ポイント高い85.9%であった。47都道府県中、最も接種率が高かったのは茨城県97.0%、最も低かったのは神奈川県76.0%であった。95%以上を達成したのは、茨城県と富山県のみであった(図1)。前年度との比較で、最も接種率が上昇したのは京都府6.3ポイント(2008年度87.3%→2009年度93.5%)、最も低下したのは千葉県−4.0ポイント(2008年度90.1%→2009年度86.0%)であった。全国47都道府県中、昨年度よりも接種率が低下したのは22道県であった。2009年度第3期対象者における未接種者数は、全国で108,718人であった。

2010年11月1日に行われた第6回麻しん対策推進会議で公表された2009年度の麻疹に対する都道府県の取り組みの評価によると、2009年度に第3期対象者に対する集団の場を利用した接種を行った自治体は、全国1,755自治体中 456自治体(26.0%)で、最も多くの自治体が実施していたのが前年度に引き続き茨城県(44自治体中37自治体:84.1%)であった。集団での接種を実施せずに高い接種率を確保した自治体も見られるものの、個別接種のみにおいて高い接種率を確保・維持するには、保護者および被接種者に対して、自治体の保健行政部門と教育関係部門の連携の下、学校を中心に繰り返し“顔の見える”勧奨を実施することが重要である。

4)第4期
2009年度の第4期の全国最終接種率は、四つの年齢群の中で最も低い77.0%で、前年度より0.4ポイント低下した。95%以上を達成した都道府県は、2008年度に引き続きひとつもなく(図1)、最も接種率が高かったのは山形県91.7%、最も低かったのは神奈川県58.6%であった。昨年度より最も接種率が上昇したのは福岡県5.4ポイント(2008年度72.9%→2009年度78.3%)、最も低下したのは千葉県−9.0ポイント(2008年度77.8%→2009年度68.9%)で、22道県において昨年度よりも接種率が低下していた。2009年度第4期対象者における未接種者数は、全国で280,942人であった。

第4期においても、保護者と被接種者に対し、保健行政と教育部門が連携した上で、“顔の見える”接種勧奨をさらに強化することが必要不可欠であり、そのためには各学校におけるクラスの担任や養護教諭の役割が何にも増して重要であると考える。

第1期〜第4期すべてにおいて、90%以上であったのは、山形県、岩手県、福井県の3県のみであった。全国接種率は2008年度と2009年度はほぼ同等であったと考えられるものの、麻疹排除計画の開始から2年を経過して、接種率においては、(1)年齢が大きくなるにつれて接種率が低下する、(2)大都市圏において特に接種率が低い、(3)接種率の高い都道府県と低い都道府県が固定化されつつある、という三つの傾向が読み取れる。これらの傾向が完全に固定化される前に、今後は、2012年度までの措置である第3期・第4期への取り組みを強化しつつ、第1期と第2期において確実にすべての都道府県において95%以上を確保していく必要がある。さらに、2008年度以降の定期接種における未接種者、および定期接種対象者ではないものの、20代後半〜30代の若年成人層に残存していると考えられる感受性者への対応も、今後、積極的に検討していかなければならないと考える。

国立感染症研究所感染症情報センター 山本久美 多屋馨子 岡部信彦

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