秋田県における麻しんワクチン接種率向上のための検討−次に接種するワクチンの検索
(Vol. 32 p. 46-47: 2011年2月号)

秋田県感染症情報センターに2003年春に県内の大学の保健センターより連絡があった。その内容は麻疹の集団感染疑いがあり、県内での麻疹の発生状況についての問い合わせであった。当時麻疹は定点把握対象疾患であったため、定点医療機関以外からの発生報告は把握されておらず、県内での報告はゼロであると返答した。その連絡の後に、秋田県内での麻疹ワクチン接種状況を確認するために県庁の予防接種担当に問い合わせを行った。2001年の調査時点で、麻疹ワクチン接種率が81%であるとの報告を受けた。接種率はWHO1) の麻疹排除計画の目標の一つである95%には到達していなかったため、県内で麻疹ワクチン接種率を95%以上に向上し、維持することをめざし、質問紙調査およびフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を実施した。質問紙調査は調査に協力した市町村で、3歳児健診時に保護者の知識、態度などについて調査を実施した2) 。また、質問紙調査ではカバーできない事項に関してはFGIを実施した3) 。FGIの対象は、2004年10月1日に県内の南部の自治体に在住し、麻疹ワクチン未接種児の保護者9人を対象とした。グループは2歳児以下を持つ保護者4人と、2歳以上6歳以下を持つ保護者5人のグループに分けた。

質問紙より、保護者が麻疹ワクチンの情報源を「行政からの文書(OR=2.6, 95% CI: 1.4-4.9)」および「母子手帳(OR=1.7, 95% CI: 1.1-2.7)」であると麻疹ワクチン接種をしていた。また、保護者の態度として「麻疹に罹る前にワクチン接種をする(OR=29.1,95% CI: 15.2-55.8)」および「すべての定期予防接種を接種する予定である(OR=19.1, 95% CI: 7.0-52.5)」と麻疹ワクチン接種をしていた。

FGIでは、ワクチン未接種の理由は「風邪をひいてなかなか行かれない」等があげられた。麻疹ワクチン接種率向上への方策として「次に接種するワクチンの順番を携帯電話で簡単に検索できる」、「麻疹ワクチンの安全性について母子手帳に記述されていると安心」、「A町以外でも麻疹ワクチンの接種ができる(かかりつけ医での接種)」、「麻疹ワクチン接種の日時が決まっていると無理してでも接種させる」などが挙げられた。

これらの結果に基づいて、政策実現として可能な事項を県庁とともに検討し、2006年4月より「次に接種するワクチンの順番を携帯電話で簡単に検索すること」と「居住自治体以外での接種を可能にする相互乗り入れ(2市町を除きスタート、現在は全県で可能)」を麻疹ワクチンに限り実施をした。

「ワクチン接種の検索」については、携帯電話とインターネットで検索を可能とした。ワクチン接種の検索には秋田県感染症情報センターホームページ(http://idsc.pref.akita.jp/kss)より予防接種検索(http://idsc.pref.akita.jp/kss/SearchSelect.html)から携帯電話()およびパソコンで検索が可能である。検索結果はのように表示される。なお、開始当初は定期ワクチンを必須項目とし、任意接種ワクチンを選択項目として運用開始した。現在、任意接種等の選択項目は更新中のため休止している。

今後、本検索システムは秋田県のみならず全国の保護者に活用され、国内での麻疹をはじめとするワクチン接種率の向上に利用されることを期待する。

 参考文献
1) WHO, WHO Vaccine-preventable Disease: Monitoring System 2003 Global Summary, Geneva, WHO, 2004
2) Association of measles immunization with knowledge and attitude in Japan. Asia-Pacific Journal of Public Health, PROGRAM AND ABSTRACT HANDBOOK (36th APACPH Annual Conference, Brisbane)
3)八幡裕一郎,田中貴子,日本健康教育学会誌 13 (Suppl): 286-287,2005

秋田県健康環境センター保健衛生部 村山力則 田中貴子 高階光栄
秋田県健康福祉部健康推進課 石井 淳 滝本法明(現、がん対策推進チーム)
国立感染症研究所感染症情報センター 八幡裕一郎

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る