ワクチン接種率の高いFerrara県での麻疹の増加、2010年1〜3月−イタリア
(Vol. 32 p. 49-50: 2011年2月号)

イタリアでは生後12〜15カ月と5〜6歳を対象にMMRワクチンの2回接種が無料で行われている。しかし、生後24カ月時点でのワクチン接種率は、2003年は84%、2006年は90%であり、WHOが麻疹排除のために設定している95%以上の目標にはまだ到達していない。ここでは、2010年前半にイタリア北東部のEmilia-Romagna州Ferrara県で発生した麻疹のアウトブレイクについて述べる。この地域は麻疹ワクチン接種率が高い地域である。

Ferrara県は人口約36万人で、2009年の新生児は2,813人であった。生後24カ月時点でのワクチン接種率は1999年94.9%、2008年96.7%と高い値であり、6歳までの2回接種率(2008年)も周辺の県より高い91.1%であった。過去10年以上にわたって麻疹の発生率は低く、伝播は自然におさまっていた。これは、ワクチン接種率が高いために感染伝播が止まったものと考えられていた。

Ferrara県で報告された麻疹検査診断例は、1999〜2009年にわずか17例であったが、2010年前半には23例(うち検査診断14例)が報告された。一般医、小児科医、地域保健当局に対して麻疹集団発生の警告がなされ、麻疹が疑われる症例の報告が求められた。その結果、計19例の検査診断例が報告された。

最初の症例は3月5日に報告された16歳の少女(ワクチン未接種)であった。麻疹症例や、麻疹流行地域への旅行歴がある者との接触は認められず、感染源は不明であった。4月9〜29日の期間に疫学的リンクのある5例の集団発生が報告された。その集団発生における初発例は11歳の少年で、その後同じ小学校の児童や生徒の妹への感染が認められた。

検査診断された19例の年齢は11カ月〜54歳(中央値21.7歳)であった。発疹の出現から報告までの期間は中央値 3.3日であった。10例が入院し、1例が肺炎を合併していた。19例のうち2例は発疹出現の3〜5日前にMMRを1回接種していたが、麻疹の潜伏期間(8〜12日)を考えると、ワクチン接種時にはすでに感染していたものと考えられた。

患者の家族や接触者にはワクチン接種が推奨され、ワクチン接種歴の無い生徒や教師は流行がおさまるまで学校への登校禁止措置がとられた。また医師に対しては、麻疹、麻疹疑い患者の早急な報告と検査室診断が求められたが、5月12日以降新規患者はいない。

麻疹排除のために必要とされている95%以上のワクチン接種率が維持されていたFerrara県でも集団発生が認められた。ただし、今回の事例が大規模な流行に至らなかったのは、ワクチン接種率が高く保たれ、感染拡大が速やかに終息したためであったと示唆される。ワクチン接種率のさらなる向上とモニタリング、特に迅速で正確な報告が行われるようなシステムを維持する必要がある。

(Euro Surveill. 2010;15(50):pii=19747)

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