集会参加旅行者での麻疹アウトブレイク、2010年9〜10月−ドイツ
(Vol. 32 p. 50: 2011年2月号)

2010年9月13〜21日に、Baden-Wuerttemberg州およびNorth Rhine-Westphalia州保健当局に、フランスのTaizéで行われた集会からの帰国後に麻疹を発症した成人6例の報告があった。Taizéはキリスト教共同体の本拠地となっており、ここで行われる集会には世界各国から若者が集まってくる。

疫学週報によって公衆衛生関係者に警告がなされ、さらなる症例探索が求められた。症例定義は、2010年9月または10月に、Taizéへの最近の旅行後に麻疹の臨床診断もしくは検査診断がなされたものとした。診断確定のために、患者およびその二次・三次感染例から、麻疹ウイルス特異的IgM抗体検出のための検体が集められた。発症者に対してはすべて地域の保健当局によって、電話または書面による調査が行われた。フランス当局に対しては、ロベルト・コッホ研究所から早期警戒対応システム(Early Warning and Response System)を用いて報告された。

症例定義を満たした13例(Baden-Wuerttemberg州9、North Rhine-Westphalia州1、Bavaria州3)が10月31日までに報告された。年齢は9〜32歳(中央値16.5歳)であった。10例が女性であった。13例すべてに麻疹の既往歴は無く、麻疹ワクチン接種歴も無かった。3例が2〜3日入院していた。この13例は各地からバスや自家用車でTaizéを訪れており、移動距離は 390〜 740kmであった。同グループであった2例と兄弟の2例を除き、別々に移動していた。

13例のTaizé滞在期間は6日〜5週間であり、ドミトリー、家族室、テントで過ごしていた。滞在中にはさまざまな活動に参加しており、他の参加者と多くの接触機会があった。13例すべてが8月27〜29日の週末にTaizéに滞在していた。

13例中5例から、17例の二次感染例(年齢2〜47歳、中央値15歳)と7例の三次感染例(年齢5〜18歳、中央値13歳)が認められた。二次・三次感染例は一次感染例の家族、友人、同級生であった。この集団発生では合計37例の麻疹症例が確認された。麻疹含有ワクチンを2000年に1回接種していた15歳の二次感染例以外のすべての症例においてワクチン接種歴は無かった。

5例から分離された麻疹ウイルス遺伝子型が検討され、遺伝子型はすべてD4変異株のD4-Manchesterと判明した。このことからはTaizéにおいて同じ麻疹ウイルス感染が複数名に生じたことが示唆された。D4-Manchester変異株は2008年以降、西部・中部ヨーロッパで検出されており、2010年にはフランスで数回検出されている。

今回の集団発生から、麻疹が排除されていない状況での大規模集会における麻疹ウイルスに曝露するリスクが示された。他の地域においても2010年8月末にTaizéに滞在した者から麻疹が広がっている可能性がありうる。ドイツにおける小学校入学時までの麻疹ワクチン接種率は95.9%(1回接種)、89%(2回接種)であった(2008年)。小児における麻疹ワクチン接種率は向上しているものの、より年齢の高い層では免疫を保有している率が不十分であろうことを忘れてはならない。地域保健局担当者は、今回の事例のように旅先から戻った人により地域に麻疹ウイルスが持ち込まれる可能性を再認識し、成人・青年層に対し麻疹抗体価の個人差があることを啓発するとともに、麻疹ワクチン未接種者へのワクチン接種勧奨を行うことが重要である。

(Euro Surveill. 2010;15(50):pii=19750)

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