Provence-Alpes-Côte d'Azur地域での麻疹アウトブレイク、2010年1〜11月−フランス
(Vol. 32 p. 50-51: 2011年2月号)

フランスのProvence-Alpes-Côte d'Azur(PACA)地域(人口478万人)において、2010年になって麻疹発症者の報告がワクチン未接種者や医療従事者間で増加したため、2008年1月〜2010年11月の報告例を対象に検討を行った。確定診断例の定義は、1)血清での麻疹IgM抗体陽性または血清あるいは口腔検体での麻疹RT-PCR陽性、または2)検査診断例との疫学的リンクが認められた症例とした。

2008年、2009年の確定診断例はそれぞれ51例、44例であったが、2010年は11月末までに384例が報告された。十分な情報が得られた310例中193例はBouches-du-Rhône県(人口191万人)から報告されており、そのうち126例は地域最大の都市であるMarseilles(人口85万人)から報告された。PACA地域での人口10万人当たり麻疹罹患率は1.07(2008年)から6.37(2010年)に増加しており、Bouches-du-Rhône県では10.64 、Marseillesでは14.78に達していた。

PACA地域における310例の男女比は1:2、31例(10%)が1歳未満、74例(25%)が20〜29歳であった。麻疹ワクチン接種歴は250例で判明し、未接種204例(82%)、MMRワクチン1回のみ接種37例(15%)、2回接種4例(2%)、接種回数不明5例(2%)であった。検査診断されたのは180例(58%)で、13例から遺伝子型D4が検出された。6歳のワクチン未接種児で急性脳炎が報告され、肺炎合併は23例であった。麻疹関連の死亡は報告されていない。

PACA地域での医療従事者の麻疹感染例は2010年11月30日までで28例(全体の9%)に及んだ。内訳は看護師4例、医師4例、学生11例(看護学生2例、医学生9例)、その他の職種7例、職種不明2例であった。20〜29歳が18例、30歳以上が10例であり、ワクチン接種歴が判明した22例のうち、未接種14例、1回接種6例、2回接種2例であった。

ガイドラインに基づき、地域健康機関が対応を行った。一般市民や医療従事者に対する情報提供、高リスク者への曝露後ワクチン接種や免疫グロブリン接種、接触者や医療従事者へのワクチン接種などが行われた。

一般市民や保健医療従事者での低い麻疹ワクチン接種率は、地域での麻疹の集団発生を起こりやすくする。生後24カ月児の1回接種率(2007年)はAlpes-Maritimes県で92%、Bouches-du-Rhône県で89%、Var県で87%、フランス全体では90%であった。また、院内での拡大を防ぐため、適切な院内感染対策を行うための意識向上や、免疫のない患者を把握してワクチンを接種することも重要である。

(Euro Surveill. 2010;15(50):pii=19754)

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