小学校集団発生から分離されたB型インフルエンザウイルス(山形系統)―三重県
(Vol. 32 p. 48: 2011年2月号)

2010年10月下旬、三重県鈴鹿市において小学校での集団かぜが発生し、小学2年生のクラス(在籍者32名)で欠席者11名、このうち患者6名がインフルエンザと診断され、学年閉鎖措置がとられた。主症状は発熱37〜40℃、咳、鼻汁、頭痛であった。患者3名からB型インフルエンザウイルス(山形系統)が分離され、抗原解析と遺伝子解析を実施したので報告する。

医療機関で実施されたインフルエンザ迅速診断キットで、B型インフルエンザと診断された3名および臨床症状からインフルエンザと診断された1名の児童から採取された鼻汁検体計4件が当研究所に搬入された。MDCK細胞によるウイルス分離を実施し、2例は初代培養2〜4日でCPEが観察された。1例は3継代培養を実施しCPEを確認した。1例は陰性であった。このウイルス培養上清液に対して0.75%モルモット赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験を行ったところ、HA価は256〜1,024を示した。そこで、国立感染症研究所より配布された2010/11シーズンインフルエンザウイルス同定キットにて赤血球凝集抑制(HI)試験による抗原解析を行った結果、分離された3株はB/Bangladesh/3333/2007(山形系統)血清(ホモ価2,560)に対して各々HI価1,280を示した。抗B/Brisbane/60/2008(Victoria系統)血清(ホモ価2,560)に対しては、HI価<10〜10を示した。抗A/California/7/2009(H1N1)pdm血清(同1,280)、抗A/Brisbane/59/2007(H1N1)血清(同640)、抗A/Victoria/210/2009(H3N2)血清(同640)ではいずれもHI価<10であり、分離された3株はB型インフルエンザウイルス(山形系統)と判定した。

また、HA遺伝子解析結果では、G229Dのアミノ酸置換を有するB/Bangladesh/3333/2007株に代表されるクレード3に分類され、近年の分離株にみられるN202S置換を有するサブクレードに属していた。

今シーズンの本県におけるB型インフルエンザウイルスの分離状況は、山形系統3例、Victoria系統1例の計4例である(http://www.kenkou.pref.mie.jp/topic/influ/bunri/bunrihyou1011.htm)。

山形系統のB型インフルエンザウイルスは2010年1月〜12月に全国で18例と、少数しか報告がなかった。そのうち三重県内で7例(3月、4月、10月)分離されている。

現在のところ、全国のB型インフルエンザウイルスの分離・検出報告数はVictoria系統が優位である(http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html)。しかし、今回、集団かぜ事例から分離された山形系統は2010/11シーズンのインフルエンザワクチンとは異なる系統であることからも、1月後半以降の流行期におけるB型インフルエンザウイルスの動向とその系統が注目される。

 参考文献
IASR 31: 253-260, 2010

三重県保健環境研究所 矢野拓弥 楠原一 赤地重宏 田沼正路 大熊和行
落合小児科医院 落合仁
すずかこどもクリニック 渡辺正博

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