【感染経路・年齢等の動向】
1.新規HIV感染者:
○同性間性的接触によるものが218件(全HIV感染者報告数の約72%)、そのうち208件が日本国籍男性。
○異性間性的接触によるものが54件(全HIV感染者報告数の約18%)、そのうち男性48件、女性6件。
○静注薬物によるものは0件(ただし、複数の感染原因が考えられるために「その他の原因による感染」に計上されているものが4件)。
○年齢別では、特に20〜30代が多いが、40代でも増加が見られる。
2.新規AIDS患者:
○同性間性的接触によるものが53件(全AIDS患者報告数の約45%)。
○異性間性的接触によるものが36件(全AIDS患者報告数の約30%)、そのうち男性34件、女性2件。
○静注薬物によるものが1件。
○年齢別では、特に30代以上に多い。
【検査・相談件数の概況[2010(平成22)年10月〜12月]】
1.保健所におけるHIV抗体検査件数(確定値)は27,211件(前回報告26,904件、前年同時期27,887件)、自治体が実施する保健所以外の検査件数(確定値)は 7,511件(前回報告7,342件、前年同時期6,604件)。
2.保健所等における相談件数(確定値)は42,030件(前回報告43,403件、前年同時期43,376件)。
前回報告および前年同時期に比べ、抗体検査件数は増加したが、相談件数は減少した。
【献血の概況[2010(平成22)年1月〜12月]】
1.献血件数(速報値)は5,318,586件(前年確定値5,287,101件)。
2.そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数(速報値)は86件(前年確定値102件)。10万件当たりの陽性件数(速報値)は1.617件(前年確定値1.929件)。
《まとめ》
1.HIV感染者、エイズ患者ともに、前回報告件数と比較して増加しており、特にHIV感染者は四半期ベースでは過去最多を更新し、HIV感染者とエイズ患者の合計も四半期ベースで過去最多を更新した。
2.第4四半期のHIV抗体検査件数は、12月1日の世界エイズデーの影響で例年最も多くなる時期だが、検査件数の伸びは芳しくなく、検査件数が減少した昨年と同水準の検査件数に止まった。
《平成22年年間報告(速報値)》
【概要】
1.今回の報告期間は2009(平成21)年12月28日〜2010(平成22)年12月26日までの約1年(四半期ごと速報値の合計)。
2.新規HIV感染者は1,050件で過去3位。
3.新規エイズ患者は453件で過去1位。
4.合計は 1,503件で過去2位。
※これまでの最高は、2008(平成20)年(確定値)でHIV感染者1,126件、AIDS患者431件、合計1,557件。
【感染経路・年齢等の動向(速報値)】
1.新規HIV感染者:
○同性間性的接触によるものが729件(全HIV感染者報告数の約69%)。
○異性間性的接触によるものが191件(全HIV感染者報告数の約18%)。
○静注薬物使用によるものが3件。
○母子感染によるものが2件。
○年齢別では、特に20〜30代が多い。
2.新規AIDS患者:
○同性間性的接触によるものが219件(全AIDS患者報告数の約48%)。
○異性間性的接触によるものが126件(全AIDS患者報告数の約28%)。
○静注薬物使用によるものが4件。
○年齢別では、特に30歳以上に多い。
【検査・相談件数の概況[2010(平成22)年1月〜12月]】
1.保健所等におけるHIV抗体検査件数(確定値)は130,930件(前年150,252件)で過去4位[過去最高は2008(平成20)年177,156件]。
2.相談件数は164,264件(前年193,271件)で過去5位[過去最高は1992(平成4)年251,926件]。
《まとめ》
1.新規HIV感染者・新規エイズ患者ともに増加傾向にあり、身近な問題として積極的にHIV感染の予防に努めるべきである。
2.新規エイズ患者は過去最多の件数が報告され、新規HIV感染者・エイズ患者に占めるエイズ患者数の割合は昨年に続き増加した。エイズ患者のうち40代以上が約6割を占めている。発症前に早期発見するために積極的な受検と、それを喚起するための啓発活動が必要である。
3.2009(平成21)年は検査・相談件数が大幅に減少した。新型インフルエンザの影響が指摘されたが、2010(平成22)年はさらに検査件数が約19,000件、相談件数が約29,000件減少した。新規エイズ患者数は過去最多の件数が報告された一方で、検査件数が減少した。治療法が進歩した現在、国民の利便性に配慮したHIV検査をさらに普及し、早期発見・早期治療によってエイズ発症者を減少させることが重要である。
4.薬物の社会へのまん延が懸念される現在、HIV感染と薬物使用の動向を注視する必要がある。
5.2010(平成22)年は4年ぶりに母子感染が報告された。母子感染については、適切な感染防御対策を講じることで、感染率を1%以下にまで制御することが可能であることを、引き続き広く周知する必要がある。
6.国民はHIV・エイズについての理解を深めていただきたい。早期発見は個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつくので、無料・匿名で自治体等で実施されているHIV抗体検査・相談の機会を積極的に利用していただきたい。