ロタウイルスによる胃腸炎集団発生−大阪府
(Vol. 32 p. 75-76: 2011年3月号)

大阪府内における胃腸炎の集団発生(≧10人)におけるロタウイルスの発生状況を報告する。大阪府管内の胃腸炎集団発生については、検査課を有する4カ所の保健所にてLamp法を用いてノロウイルスの検査を実施し、陰性であった場合は大阪府立公衆衛生研究所にてその他の原因ウイルスを調査している。A群ロタウイルスはELISA法(ロタクロン:TFB 社)、C群ロタウイルスはG8S/G8ASプライマーセットを使用している[葛谷ら、感染症学雑誌 77(2): 53-59, 2003 ]。

2005年1月〜2010年12月までの大阪府管内における集団胃腸炎は 974事例あり、A群ロタウイルスによる集団胃腸炎11事例、C群ロタウイルスは8事例と2%を占めた(表1)。A群ロタウイルスの発生施設は9事例が保育所、小学校と高齢者施設が各1事例であった。一方でC群ロタウイルスは全事例が小学校での発生であり、A群とC群における好発年齢の違いが明らかであった。しかしながら、低年齢に発生しやすいA群ロタウイルス事例であっても高齢者施設において20代の介護職員の発症が認められた。発生時期はA群、C群ともに4月と5月が多い。患者数の平均はA群ロタウイルスで24人/事例、C群ロタウイルスでは47人/事例であった。A群ロタウイルスは毎年流行するため感染歴のない低年齢層の発症のみで小規模な事例となりやすいが、C群ロタウイルスは行動範囲が広く活発な学童での感染が中心であるため、感染が拡大しやすい傾向にある(IASR 27: 121-122, 2006)。

なお、2011年1月〜2月17日までにすでに4例のA群ロタウイルス事例が発生している(病院での検査対応1事例を除く)。IASR Vol.26 No.1特集によると、A群ロタウイルスの流行は1999/2000〜2003/04は毎年3月がピークとなっており、1月がピークとなったのは1983/84シーズン以前である。したがって、2011年は例年に比べ流行が早く始まっており、また発生数も多いことが予測される。発生場所は3例が保育所、1例が小学校であった。小学校における発生は1年生(7歳児)を中心とした発生であったが、5年生(11歳児)にも数名発症者がおり、C群ロタウイルスを原因と疑うような発生パターンを示した。また職員の発症(嘔吐・下痢)が保育園での2事例および小学校での事例で認められた。いずれの職員も嘔吐物の処理を行っていた。これまでに嘔吐物からロタウイルスを検出したことはないが、感染源となるかもしれない。

A群ロタウイルスは乳幼児期に数回感染を経験することで発症を免れるようになる。したがって、乳幼児期以降、免疫の低下する高齢にいたるまでは発症しにくいと考えられている。しかしながら、近年、集団発生において職員等が発症する事例やロタウイルス患児の父母等の発症を経験している。このことから、兄弟数の減少、紙おむつの使用、衛生管理の徹底などによって乳幼児期の感染機会が減少している可能性や、乳幼児期に数回感染していてもそれ以降の感染機会がなければ抗体価の減少により発症を防御できないのかもしれない。そのため、今後成人の発症や、患児の両親等の発症情報があった場合、まずノロウイルスを疑うべきではあるが、ロタウイルスが原因となることも忘れてはならない。

大阪府立公衆衛生研究所ウイルス課
左近田中直美 中田恵子 山崎謙治 加瀬哲男

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