2カ所の保育施設における腸管出血性大腸菌O26発生事例―大阪市
(Vol. 32 p. 137-138: 2011年5月号)

1.事例の概要
事例1:2010年8月30日、大阪市内医療機関より腸管出血性大腸菌感染症(EHEC O26 VT1)を発症(血便・発熱)した1歳女児の届出があった。患児は保育施設(鶴見区A園:0〜5歳児142名、職員30名)に通園していた。調査の結果、軟便を呈していた他の園児からもEHEC(O26 VT1)が分離されたことが判明し、0歳児、1歳児、4歳児および職員の検便を実施した。EHECが検出された園児の家族も健康調査および検便の対象とした。園児6名、家族3名よりEHEC(O26 VT1)が検出された。園児は軟便・発熱を認めたが、家族(父母)は3名とも無症状であった。

事例2:事例1に対応中の9月6日、医療機関より阿倍野区内のB園(0〜5歳児109名、職員16名)の血便を呈する園児よりEHEC(O26 VT1)を分離したという報告があった。A園との関連は不明であったが、ただちに0歳児および職員の検便を実施した。また、EHECが検出された園児の家族も健康調査および検便の対象とした。園児2名、家族3名よりEHEC(O26 VT1)が検出された。事例1および2の検査結果をまとめて表1に示した。

2.パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)型別
事例1より分離されたEHEC(O26 VT1)9株、事例2からの5株、6月に大阪市内で分離された散発事例由来の1株について、PFGE法で解析した。A園関連9株(図1:レーン1〜9)は同一のパターンを示した。しかし、同時期に発生したB園関連5株(図1:レーン10〜14)は、A園関連株とはPFGE型が異なっていた。散発事例の1株(図1:レーン15)は、事例1あるいは2のいずれの株とも異なったパターンを示した。

3.考 察
A園と同時期に発生し、その関連が疑われたB園のEHEC(O26 VT1)集団感染は、PFGE解析の結果よりそれぞれ別の感染源による独立した事例であることがわかった。散発事例株はA園あるいはB園、いずれの集団発生関連株とも異なったパターンを示した。この1株は水様性下痢・血便・発熱の症状を呈した小学生から分離された。

今回のように、2カ所の保育施設で連続してEHEC感染症が発生した場合に、同一の感染源によるものかどうかを疫学的な関連のみで判断するのは難しい。集団発生時の感染経路等の検証にはPFGE法による型別が不可欠であることを示す事例であった。

4.結 論
A園関連9株はPFGE型がすべて一致した。A園と同時期に発生し、その関連が疑われたB園関連5株は、A園関連株とはPFGE型が異なり、二つの保育施設での集団発生は別の感染源によるものであった。

大阪市立環境科学研究所
小笠原 準 中村寛海 和田崇之 梅田 薫 有川健太郎 大山み乃り 増野功章 長谷 篤
大阪市保健所
澤口智登里 青木直美 森本光恵 齋藤武志 石黒正博 川人礼子 鎌倉和哉 吉田英樹

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