溶血性尿毒症症候群の臨床サーベイランス、2003〜2009年:3年間のフォローアップでの腎臓の予後−英国・スコットランド
(Vol. 32 p. 150, p. 154: 2011年5月号)

スコットランドは英国内の他地域や欧州の他国に比べ、腸管出血性大腸菌(EHEC)O157の感染率が高い。過去の報告では、小児の溶血性尿毒症症候群(HUS)発症者で、EHEC O157が検出される割合は90%以上を占めた。今回一般住民の全年齢層を対象としたHUSの疫学サーベイランス研究で、HUSの発症と感染した病原体や治療との関連、予後についてまとめた。

2003年に始まった全国的なアクティブサーベイランスプログラムの一部として、HUS患者はHealth Protection Scotland(HPS)へ報告されている。血液学や感染症学、腎臓学など各分野の複数のコンサルタントによって、血栓性微小血管症(TMA)の症例定義に合致するかどうかが確認される。2003年1月1日〜2009年12月31日までに、TMA 238例が報告され、うち180例がHUSと判定された。HUSの平均年間発症率は人口10万対0.5であり、年平均HUS発症者数は27例(15〜40)、2006年は40例の報告で最も多かった。180例中146例がEHEC O157の感染で関連性の高さが示され、他の病原菌として非O157EHEC(O26、O177、O145)や肺炎球菌(3例)が含まれていた。

スコットランドではHUSの治療は標準化されていないが、腹膜透析(49/180=27%)が最も多く、他は血液透析41例(23%)、血漿交換32例(18%)、ステロイド剤投与12例(6.7%)、血液濾過6例(3.3%)であった。

予後は、86例(48%)が透析をせずに退院/回復、何らかの腎障害24例(13%)、要透析13例(7.2%)、神経障害7例(3.9%)で、死亡が7例(3.9%)であった。

39例については、退院後3年のフォローアップが行われているが、予後に大きな変化は見られなかった。また、このコホートでは10%にHUSの再燃が認められた。

スコットランドでの小児のEHEC感染による予後は、他国の報告と比較して良好である。また、EHEC感染によるHUS発症例の予後は、病原体が同定されないHUS発症例の予後と比較してより良好である。すべての病型のHUSを5年間追跡し評価するプログラムが進行中であり、これらのHUS発症例のうち、特に無尿を呈した患者の中で慢性腎不全への移行率を詳細に評価する。

(HPS Weekly Report 44: 95-97, 2010)

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