2010年11月4日、コンゴ共和国のPointe Noireの住民が、1型野生株ポリオウイルス(WPV1)によるポリオ患者であることが確認された。検出されたWPV1は2010年にアンゴラで分離された株と遺伝的にもっとも近縁であった。遡り調査では、9月上旬から急性弛緩性麻痺(AFP)患者の入院が増加し始め、週別入院患者数は10月初頭には約10例/週であったものが10月末には約80例/週に増加した。2010年9月20日〜2011年2月27日までに発症したAFP患者は、全国で計560例(2011年3月15日まで)が確認された。そのうちの467例(83%)はアウトブレイクの始まったKouilouやPointe Noireに隣接する地域の住民であり、この地域のAFP患者318例(68%)は男性(うち305例は15歳以上)で、致死率(CFR)は40%(187/467が死亡)であった。
2011年3月15日までで、70/560例(12%)で採取された検体からWPV1が確認された。適切な検体(発症後14日以内に2度の便検体)が採取されたのは106例(19%)しかなく、便検体のなかった328例中317例はアウトブレイクとの疫学的関連によって特別に確定例として報告され、それによりポリオの確定患者は387例に増加した。
アウトブレイク対策として、4回にわたる補足的予防接種活動(SIA)が全国民を対象に行われ、Kouilouに隣接する他国(アンゴラ、コンゴ民主共和国、ガボン)の地域とも協調して行われた。
3月15日現在、アウトブレイクはほぼ制圧されつつあり、最も直近に確認されたWPV感染患者のAFP発症日は1月22日である。国内のWPV1によるポリオ患者発生は10年ぶりであり、この理由として、長年にわたり若年成人におけるワクチン接種歴を有する者の割合が低いことや、この地域でWPV1の感染が長期間なかったことがあげられる。また、他の要素として、人口密度の高さや上水設備が限られていること、下水設備の悪さなどが寄与している。CFRの高さは、不十分な治療や治療そのものの遅れとともに、小児と比べて延髄麻痺のリスクが高いことで知られる若年成人の割合の高さが関係している。成人に関連した過去のWPV1アウトブレイク時のCFRは12〜32%と報告されており、今回の高いCFRの原因調査は継続中である。
(WHO, WER, 86, No.15, 141-142, 2011)