2011年4月15日に、米国フロリダ州Escambia郡保健局の疫学調査チームが、州保健局の食品・水媒介疾患対策プログラム(FWDP)へnon-O1/non-O139 V. cholerae の1例を報告した。20代男性で、4月6日にレストランで生カキを喫食し、12日に腹痛、発熱、水様性下痢、嘔気を発症した。州保健局検査部で分離株を調べた結果、毒素産生V. cholerae O75の感染が疑われた。検体はCDCに送られ、19日に確定された。
その後も症例が次々と報告されたため、4月21日にFWDPから、フロリダEpiComシステム(州規模の疫学的警報システム)に警報が出され、カキに関連する毒素原性V. cholerae の感染症例が通知された。28日には同様の通知がCDCのEpiX通知システム(全国規模の疫学的警報システム)へ掲示された。
その結果、10症例(確定8例、ほぼ確定1例、疑い1例)が報告された。年齢は22〜74歳、6例は男性であった。居住地はフロリダ州7例、インディアナ州、ジョージア州、ルイジアナ州各1例であった。症状は、下痢9例、悪寒8例、嘔気7例、嘔吐4例、腹痛1例、発熱1例であった。入院を要する症例はなく、従来のV. cholerae O1やO139感染症よりは軽症だった。曝露期間は3月21日〜4月11日であり、発症期間は3月23日〜4月13日であった。潜伏期間は1〜6日(平均2日)であった。
米国ではカキの収穫は州(フロリダ州農務消費者サービス局農務課:DOACS)と連邦(食品医薬品局:FDA)でそれぞれ管理されている。カキには産地と収穫日が記録されているので遡り調査が可能である。その結果、汚染されたカキはメキシコ湾のApalachicola湾の単一のカキ収穫地域からのものと判断された。4月30日にこの地域は閉鎖され、収穫業者と販売業者は流通しているカキを回収した。DOACSは収穫地域の10地点から15試料を集め、FDAの検査室でV. cholerae O75が陰性であることを確認した後、5月11日より同地域はカキの収穫を再開した。
フロリダでの毒素原性V. cholerae 感染症は極めて珍しいことであり、今回は初めてのO75感染症のアウトブレイクである。
(Euro Surveill. 2011;16(20):pii=19870)