風疹含有ワクチン接種率調査(2010年度全国集計結果:2011年8月現在暫定値)
(Vol. 32 p. 262-263: 2011年9月号)

2006年度から、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)が定期接種に導入され、さらに2006年6月2日からは、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前1年間の者)の年齢層に対する2回接種制度が始まった。

2006年春に始まった関東地方での麻疹の地域流行は、2007年には全国的な流行となり、多くの高等学校や大学が麻疹により休校になり、社会問題にも発展したことから、2007年12月28日に「麻しんに関する特定感染症予防指針」が厚生労働大臣から告示され、2008年度から5年間の時限措置として第3期(13歳になる年度の者)と第4期(18歳になる年度の者)の年齢層に対する2回目のワクチンが定期接種に導入された。

MRワクチンの使用が原則になったことにより、風疹含有ワクチンの接種率は急増しており、その効果は著明である。

本稿では、第1、2期開始後5年目、第3、4期開始後3年目の2010年度の第1期〜第4期の風疹含有ワクチンの接種率を図1に示す。

1)第1期
2010年度、全国の接種率は、95.6%であり、2009年度と比較して2.0ポイント上昇し、目標とする95%以上を初めて達成した。最も高かったのは徳島県の99.6%、最も低かったのは奈良県の91.3%であった。95%以上を達成したのは、2009年度が47都道府県中9道府県であったのに対し、2010年度は34道府県と著明に増加し、90%未満の都道府県はゼロとなった(図1)。このまま95%以上を継続して維持していくことが重要と考える。なお、2010年度第1期対象者における未接種者数は、全国で47,873人であった。

2)第2期
導入5年目にあたる2010年度の第2期全国接種率は92.2%であり、前年度92.3%より0.1ポイント減少した。最も高かったのは新潟県の96.9%、最も低かったのは神奈川県の88.4%であった。95%以上の接種率を達成していたのは8府県であり(図1)、日本海側の県に多かった。初年度の2006年度と比較すると、約10ポイントの上昇が見られており、制度の定着がうかがえる。95%以上達成には就学時健診でのさらなる接種勧奨が重要と考えられ、国レベルでの実施を積極的に検討する必要がある。なお、2010年度第2期対象者における未接種者数は、全国で86,765人であった。

3)第3期
導入3年目である2010年度の全国接種率は87.3%であり、前年度の86.0%より1.3ポイント上昇した。47都道府県中、最も接種率が高かったのは茨城県の96.5%、最も低かったのは鹿児島県の79.9%であった。95%以上を達成したのは、茨城県、富山県、福井県、新潟県の4県であり(図1)、2009年度より2県増加した。また、全国47都道府県中、35都道府県で昨年度より接種率が上昇した。接種を受ける本人とその保護者、自治体と学校が連携して、接種の意義、予防の重要性についての教育を本人と保護者に行うとともに、未接種者への積極的な接種勧奨が95%の目標達成には重要と考える。なお、2010年度第3期対象者における未接種者数は、全国で152,628人であった。

4)第4期
2010年度の第4期の全国接種率は、4つの期の中では最も低い78.9%であったが、前年度より1.8ポイント上昇した。95%以上を達成した都道府県はなかったが(図1)、2009年度と比較すると、全国47都道府県中、34都道府県で接種率が上昇し、90%以上となった都道府県も7県に増加した。最も接種率が高かったのは山形県の91.7%、最も低かったのは神奈川県の62.8%であった。なお、2010年度第4期対象者における未接種者数は、全国で256,856人であった。第4期においても、第3期と同様に、保護者と被接種者に対し、保健行政と教育部門が連携した上で、“顔の見える”接種勧奨をさらに強化することが必要不可欠であり、そのためには各学校におけるクラスの担任や養護教諭の役割が何にも増して重要であると考える。この年齢になると、本人に対する接種意義の説明や、妊娠出産年齢が近くなっていることから、先天性風疹症候群(CRS)の予防に重要であることを被接種者本人に理解してもらうことが重要と考える。

第1期〜第4期すべてにおいて90%以上であったのは、秋田県、山形県、新潟県、富山県、福井県、島根県、佐賀県の7県であり(図1)、2009年度の3県と比較すると増加していた。2009年度の調査で認められていた(1)年齢が大きくなるにつれて接種率が低下する、(2)大都市圏において特に接種率が低い、(3)接種率の高い都道府県と低い都道府県が固定化されつつある、という三つの傾向は2010年度も変わらず見られていたが、2009年度に比較すると、全体的に接種率は上昇しており、2012年度までの措置である第3期・第4期の接種率を目標の95%に高めるとともに、第1期の95%以上は維持しつつ、第2期も95%以上を達成できるよう、さらなる啓発が必要である。

2011年は国内で風疹が流行しており、海外での感染にともなうCRSの発生が近年目立っていることを鑑みると、妊娠出産年齢である20〜40代の女性に加えて、特に風疹抗体保有率の低い成人男性にも、今後、積極的に風疹含有ワクチンの接種勧奨を検討していかなければならないと考える。

国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子 佐藤 弘 岡部信彦

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