風疹ワクチンWHOポジションペーパー
(Vol. 32 p. 271-272: 2011年9月号)

これは2000年5月にWeekly Epidemiological Recordに掲載された最初の風疹ワクチンポジションペーパーの更新である。

WHOは世界的な先天性風疹症候群(CRS)による疾病負担の現状と風疹含有ワクチン(RCVs)の効果および安全性を踏まえ、麻疹の抑制・排除活動を活用し、RCVsを導入するよう各国に勧告する。麻疹ワクチン接種戦略は、接種活動の一体化の機会を与え、風疹とCRS排除へ枠組みを提供するものである。まだ風疹ワクチンを導入していない、もしくは定期接種または補足的予防接種活動(SIAs)による麻疹ワクチン2回接種を提供しているすべての国は、予防接種計画にRCVsを含めるかどうかを検討すべきである。

風疹ワクチン導入には2つのアプローチがある。ひとつはCRSの減少に焦点をあてたものであり、もうひとつは風疹ウイルスの伝播を断ち切ることによるCRSおよび風疹の排除に焦点をあてた、より包括的なものである。前者は思春期や成人女性に定期接種し、出産可能な女性を直接守るが、新生児や年齢の若い小児への接種計画がないと風疹は流行し続け、妊婦は曝露を受けることになり、CRSのリスクにさらされる。後者の達成を確実なものにするためには、MRまたはMMRを用い、麻疹ワクチン接種と結合すべきである。その最も良い方法は 、MRまたはMMRワクチンを広範な年齢群に接種するキャンペーンを実施し、その後直ちにMRまたはMMRワクチンを定期接種計画に盛り込むものである。風疹ワクチンを導入する国は、感受性の状況を含めた疫学、CRSの疾病負担の検討が必要である。費用対効果分析は風疹ワクチン導入前のすべての国で行う必要はなく、社会人口学的な環境が似ている国での結果を援用することが有用であるかもしれない。

1回目のRCV接種は麻疹ウイルス伝播のレベルに応じて9カ月または12カ月に行い、さらに定期接種あるいは大規模なキャンペーンにより、思春期や出産可能な成人女性に接種が行き届くようにしなければならない。ワクチン接種率が十分に高ければ、風疹は目に見えて減少し、妊婦が風疹の曝露を受けるリスクを無くすことができる。CRSのリスクが増加する可能性を避けるためには、予防接種率は80%以上を維持する必要がある。

風疹は麻疹よりも感染性が高くないこと、また、1回接種の有効性は95%以上であることから、接種率が高ければ、風疹排除には風疹ワクチンの1回接種で十分である。しかし、麻疹ワクチン接種と一体化している場合には、MRまたはMMRによる2回接種のほうが実施しやすいかもしれない。

ワクチン含有物に対するアナフィラキシー反応の既往歴、妊娠、重度の免疫不全を除いて、風疹ワクチンの禁忌はない。理論的には実証はされていないが、風疹ワクチンによる催奇性のリスクを原則的に避けなければならないので、ワクチン接種後1カ月以内の妊娠を避けるよう推奨される。ワクチン接種前または直後の輸血あるいは血液成分の投与は、ワクチンの効果に作用するかもしれない。血液成分の投与を受けた者は、RCVsのみの接種であればワクチン接種前に少なくとも3カ月待つべきである。また、ワクチン接種後2週間は血液成分の投与を避けるべきである。接種後1カ月は献血できないため、思春期や成人の幅広い年齢層に対する風疹ワクチン接種キャンペーンは献血量を低下させるかもしれない。ワクチン接種キャンペーン前と直後に、献血を維持させるためには、対象年齢以外の人々(例えば40歳以上)におけるの献血の必要性の認識を向上させる特別な努力が必要である。

風疹サーベイランスは麻疹サーベイランスに統合し、一体化したシステムとすべきである。風疹ワクチン接種の効果を示すためには、WHOサーベイランスガイドラインに従い、風疹の病原体診断体制、CRSサーベイランス、ウイルスの分子疫学解析が必要である。また、大規模な風疹ワクチン接種の導入後は、年齢や地域ごとの接種率が調査されなければならない。これにより継時的な接種計画の効果を監視し、将来的な計画を導くことができる。

(WHO, WER, 86, No. 29, 301-316, 2011)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る