手足口病患者からのコクサッキーウイルスA6型の検出状況―和歌山県
(Vol. 32 p. 269: 2011年9月号)

2011年の感染症発生動向調査事業における和歌山県内の手足口病患者報告数は、第20週頃から増加し始めた。第28週には定点当たり報告数9.97人となり、2000年以降では2007年に次ぐ流行規模となっている(図1)。

手足口病の原因ウイルス検索として、細胞培養法ではRD-18S、Vero、Vero-E6、HEp-2、A549細胞を使用した2代継代培養を、遺伝子増幅法ではVP1領域を標的としたRT-PCR法1) (A群エンテロウイルス用プライマー:486/488)を実施した。RT-PCR法で目的産物が確認されたものについて、ダイレクトシークエンス法により塩基配列を決定し、DDBJのBLAST検索により最も高いスコアを示した登録株の血清型を同定結果とした。

5月以降に採取された手足口病患者55症例由来の臨床材料を用いて調査した結果、細胞培養法では、いずれの細胞でも細胞変性効果はみられなかった。一方、RT-PCR法では、55検体中、41検体でCSF-1739/07株(Accession No:FJ525951)に93〜94%の相同性を有したコクサッキーウイルスA6型(以下CA6)が検出された。41株の相同性は、塩基配列で97〜100%であった(図2)。なお、陰性となった14検体については、VP4領域を標的としたRT-PCR法2) (プライマー:EVP4/OL68-1)も実施したが、すべて陰性であった。

臨床所見上の特徴としては、41症例中33例(約80%)で発熱がみられ、このうち27例(約66%)が38℃以上と、一般的な手足口病に比較して高熱を呈した症例が多い傾向がみられた。

現在、県内では手足口病と同様ヘルパンギーナも流行しているため、ウイルスの検索範囲を拡げつつ、CA6流行の全体像解明と臨床的特徴の検討を進めていく予定である。

 参考文献
1) Oberste MS, et al ., Journal of General Virology 87: 119-128, 2006
2) Ishiko, et al ., Intervirology 45: 136-141, 2002

和歌山県環境衛生研究センター
仲 浩臣 寺杣文男 青木一人 玉置三朗 島田美昭

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