心肺停止患者の咽頭ぬぐい液からのコクサッキーウイルスA6型(CA6)の検出と県内CA6の検出状況―鳥取県
(Vol. 32 p. 270: 2011年9月号)

2011年6月12日に採取された原因不明の心肺停止例の咽頭ぬぐい液1検体からコクサッキーウイルスA6型(CA6)を検出したのでその概要を報告する。なお、患者の居住地は島根県であるが、鳥取県内の医療機関に緊急搬送された。

患者は3歳女児。既往歴は無い。患者は6月11日の17時15分ごろまでプールで元気よく遊んでいた。プール後、悪寒を訴え、帰宅後体温を測定したところ、39℃の発熱があった。アセトアミノフェン座剤を挿入し、寝かせつけるも、18時前には呼びかけ応答しなかった。その後痙攣、嘔吐し、顔色不良となったため、心臓マッサージを開始した。緊急搬送時、ならびに病院到着時 (18時40分) も心静止状態であったが、蘇生処置により18時55分に心拍再開し、入院となった。翌12日にICU管理となった。多尿があり、また朝より腹部圧迫にて黒色水様性便が排出された。これ以降下血し、水様便が多量持続した。出血傾向が続き、貧血の進行が認められた。また、著明な高血糖、代謝性アシドーシスがあった。入院3日目、心機能低下し、入院5日目、3時10分に死亡が確認された。

入院2日目に採取された咽頭ぬぐい液を、ヒト横紋筋細胞由来細胞 (RD細胞) に接種し、細胞を経過観察したところ、接種6日後にエンテロウイルスに特徴的な細胞変性効果 (CPE)を認めた。これを回収後、ウイルスRNAを抽出し、VP4部分領域を増幅する(EVP4/OL68-1) プライマーを用いてPCRを実施した。目的とするPCR産物を認めたため、ダイレクトシークエンス法により遺伝子配列を決定した。BLASTによる相同性検索を行った結果、GenBankに登録されているCA6と96%の相同性を示したことから、CA6陽性と判定した。

一方、来院後CTで脳に著明な浮腫が認められ、心筋逸脱酵素が陽性であったが、これらは心肺停止に起因するものと考えられた。また、タンデムマス代謝スクリーニング結果で異常はなかった。さらに、患者家族が剖検を希望されなかったことから、この心肺停止例はウイルス感染が原因かどうかは判断ができなかった。

この症例以外にも、県内では、RD細胞を用いる細胞培養法で、CA6の分離が相次いでいる (表1) 。臨床診断名は、手足口病 (3件)、ヘルパンギーナ (2件)、上気道炎、下気道炎、熱性けいれんであり、症状も軽度なものから重度なものまで様々であった。患者居住地は、鳥取県中部地区、西部地区、岡山県 (鳥取県中部地区隣接市)、ならびに島根県 (鳥取県西部地区隣接市:上記症例)であり、鳥取市を中心とする県東部地区のものはなかった。鳥取県における2011年の手足口病の患者発生は、鳥取県中部、西部地区において過去10年で最も多く推移したが、東部地区の流行は例年通りであり (図1)、これが反映されていると考えられる。

鳥取県衛生環境研究所保健衛生室 白井僚一 山本香織 浅野康子
鳥取大学医学部付属病院小児科 横山浩己
鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科 近藤章子

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