HIV-2感染症サーベイランス、1987〜2009年―米国
(Vol. 32 p. 300-301: 2011年10月号)

ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus; HIV)は2つのタイプ(HIV-1およびHIV-2)に分類され、ほとんどのHIV感染症はHIV-1によるものである。両タイプとも感染経路は同じで、後天性免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrome; AIDS)を引き起こす。しかし、HIV-1に比べHIV-2はAIDSの原因になることはあまりなく、治療方針が異なり、また、HIV-2感染症例は西アフリカ出身者がほとんどである。

従来の症例定義ではHIV-1とHIV-2が明確に区別されていなかったため、2009〜2010年にかけて米国疾病対策センター(CDC)がワークグループを召集し、HIV-2感染症の症例定義を作成し、以下の3項目の1つ以上を満たす場合をHIV-2感染症と定義した。
(1)HIV-1とHIV-2を鑑別する抗体イムノアッセイ法で、HIV-2が陽性となり、HIV-1が陰性となること
(2)HIV-2核酸検査が陽性となること(DNAでもRNAでも可)
(3)HIV-2イムノブロット法が陽性となり、かつHIV-1イムノブロット法が陰性か不確定であること

1988〜2010年6月までのHIV-2のサーベイランスで、242例の報告があったが、上記症例定義にあてはめたところ、症例定義を満たすのは166例であった。米国のこの期間のHIV感染症例全体数は 140万例であるので、HIV-2感染症例は0.01%を占めるにすぎない。報告症例の報告地域別解析によると、米国北東部が 110例(66%)と多く、特にニューヨーク市が77例(46%)と集中していた。出身国別割合は西アフリカが圧倒的に多く、81%を占めていた。報告症例の89%は非ヒスパニック系黒人であり、58%が男性、HIV感染症と診断された年齢の中央値は39歳(21〜76歳)であった。

上記症例定義で示されたようなHIV-2に特異的な検査法は、まだ広く浸透していない。これまでのHIV検査(抗体イムノアッセイ法)では、米国におけるHIV-2感染症を見逃している可能性がある。HIV感染症の臨床所見があるにもかかわらず、現在広く行われているHIV-1の検査法で陰性であるとき、特に症例が西アフリカ出身であるような場合には、HIV-2特異的な検査法を行うよう鑑別診断を進めていくべきである。

(CDC, MMWR, 60, No.29, 985-988, 2011)

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