MSMの間でのHIV検査、2008年―米国の21都市
(Vol. 32 p. 301: 2011年10月号)

男性同性愛者(men who have sex with men:MSM)は13歳以上の米国人口の2%と推定され、2009年に米国でHIV感染症と診断された人の59%が、静注薬物使用者である者も含めてMSMであった。米国疾病対策センタ−(CDC)は、性的に活動的なMSMに対してHIV感染の有無の確認と、持続する伝播を防ぐため、少なくとも年に1回はHIV検査をするよう推奨している。MSMが推奨されたように検査を受けたか、また、年に1回以上の検査が必要かどうかを評価するため、CDCは2008年に全国HIV行動サーベイランスシステム(National HIV Behavioral Surveillance System:HIV感染のハイリスクグループ人口の間でのHIV関連の危険、検査、予防行動やHIV有病率を監視するためのサーベイランスシステム;以下NHBS)のデータを分析した。AIDSの有病率が高い21都市在住のNHBSに登録されている18歳以上のMSMで、過去のHIV検査で陽性でなかった者を抽出して聞き取り調査およびHIV検査を実施し、過去12カ月間にHIV検査を受けた割合や、その人たちの中でHIV検査が陽性であった割合などを解析した。

調査対象となった7,271人のMSMのうち、44%は白人であり、25%はヒスパニック系、そして23%が黒人であった。年齢中央値は34歳(18〜85歳)であり、62%が大学教育を受けておらず、29%が世帯年収2万ドル以下であり、34%が健康保険に未加入であった。この7,271人のうち、680人(9%)がHIV検査陽性であり、そのうち16%は過去にHIV検査を受けたことがなく、29%は過去6カ月の間にHIV検査を受けて陰性であった。4,453人(61%)が過去12カ月間でHIV検査を受けており、その割合は若年者、高学歴・高収入でより高かったが、人種・民族では差がなかった。ハイリスク行動(複数のパートナー、静注薬物使用など)をとっていた5,864人(81%)のMSMの中で、44%は過去6カ月の間にHIV検査を受けていた。過去12カ月の間にHIV検査を受けHIV陰性であった4,453人のMSMの中で、7%(黒人の15%、ヒスパニックの7%、白人の3%)は今回のHIV検査では陽性であった。4,453人のうち、ハイリスク行動をとっていない781人のMSMでは陽性が8%であり、ハイリスク行動をとっていた3,672人のMSMでは7%が陽性であった。

過去に検査を受けてきたMSMの新規HIV感染が、ハイリスク行動の有無にかかわらず、同様に高い有病率を示していることを考慮すると、性的に活動的であるMSMに対して、より頻回のHIV検査(たとえば3〜6カ月ごと)の有効性が示唆された。

(CDC, MMWR, 60, No.21, 694-699, 2011)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る