山口県においては、毎年度、「山口県インフルエンザ予防対策実施要領」に基づき、学校等の集団におけるインフルエンザの発生を早期に探知し、感染の急速な拡大や大規模かつ一斉の流行を回避・緩和することを目的としたインフルエンザ予防対策を実施している。
具体的には、学校等は、インフルエンザによる臨時休業(休校・休園、学年閉鎖、学級閉鎖)の措置を行った場合(集団発生事例)には、患者の発生状況について保健所等を通じて県健康増進課に報告する。県健康増進課は、とりまとめた内容を関係機関および報道機関に速やかに還元し、注意喚起を図る。また、各保健所管轄内の初発事例については、原則すべての事例について、校医もしくは近隣医療機関の協力により、1事例につき数名の患者から咽頭ぬぐい液を採取し、環境保健センターにてPCR検査によるウイルス遺伝子検出および型・亜型判定を行い、その結果を迅速に関係機関に還元する。
山口県におけるインフルエンザ発生状況は、2011年8月以降、感染症発生動向調査の定点報告数が0であり、病原体定点医療機関で採取された検体からも6月以降インフルエンザウイルスは全く検出されていなかった。このような状況の中、2011/12シーズンのインフルエンザ集団発生初発事例が、2011年9月に発生した。山口県内での9月のインフルエンザ集団発生事例は、インフルエンザA(H1N1)2009が発生した2009/10シーズンを除くと、感染症統計で調べる限り、最も早い発生であった。
2011年9月27日に県東部の幼稚園(在籍園児127名)の1学級(在籍園児31名)において、8名がインフルエンザ様疾患で欠席し、学級閉鎖の措置がとられた。管轄保健所が近隣医療機関に検体採取の依頼を行い、当該幼稚園在籍の2名の患者から咽頭ぬぐい液が採取され、9月28日にインフルエンザウイルスPCR検査のために環境保健センターに搬入された。
これらの検体について、Real-time RT-PCR法によるインフルエンザウイルス遺伝子検出を実施したところ、2名の検体から、ともにインフルエンザウイルスA型およびAH3亜型特異的遺伝子が検出された。このことから、当該幼稚園での集団発生事例は、インフルエンザウイルスAH3亜型(香港型)によるものと判断した。
なお、2名の咽頭ぬぐい液については、現在MDCK細胞によるウイルス分離を実施しており、分離され次第、HI試験による抗原解析を実施する予定である。
この集団発生事例の翌日に、同じ幼稚園の別学級(在籍園児32名)で7名がインフルエンザ様疾患で欠席し、学級閉鎖の措置がとられたが、山口県内では、その後の流行の広がりはみられていない。しかしながら、既に他県からもインフルエンザウイルスの検出1)が報告され始めていることもあり、本格的なインフルエンザ流行シーズン前の、早めのワクチン接種等の感染予防対策を広く周知する必要がある。
参考文献
1)IASR インフルエンザウイルス分離・検出速報 2011/12シーズン
http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html
山口県健康福祉部健康増進課
山口県環境保健センター
戸田昌一 岡本玲子 渡邊宜朗 濱岡修二 冨田正章 調 恒明