手足口病後に脱落した爪からのコクサッキーウイルスA6型の検出―和歌山県
(Vol. 32 p. 339-340: 2011年11月号)

コクサッキーウイルスA6型(以下CA6)が原因の手足口病患者において、病後に爪甲が脱落する症例が国内外で報告されている1,2) 。当院でも同様の症例が複数確認され、うち2例の爪甲からCA6が検出されたので、その概要を報告する。

症例1:6歳 男子
主訴:発熱。2011(平成23)年6月23日から38℃台の発熱があり、24日受診。
初診時所見:咽頭発赤以外に所見なく、咽頭炎の診断で抗菌薬の投与を受ける。
経過:翌日から解熱したが、口の周囲、膝、手、足に紅色発疹が出現(写真1写真2)。手足口病と診断した。口腔内のアフタはなし。咽頭にヘルパンギーナ様発疹を認める。その後順調に経過し、1カ月後受診した時には爪に変化はなかったが、8月11日に受診した時に左第3指の中央から爪の脱落(写真3)を見つけ、脱落した爪からPCR法により3)、CA6を検出した。その後、爪は正常になった。

症例2:13歳2カ月 男子
主訴:発熱。2011(平成23)年7月11日から38.6℃の発熱があり、夕方受診した。
初診時所見:39.9℃の発熱。咽頭発赤以外に所見なく、手足に発疹なく咽頭炎と診断した。
経過:翌日には解熱したが全身に粟粒大の発疹、痒み、爪全体が紅潮し痛いと訴える。手足に発疹を認め、口腔内のアフタはなく、手足口病と診断した。14日後から爪に変化があり、8月12日には爪の脱落を認め、脱落した爪からPCR法により、CA6を検出した。その後、母、姉、妹も同様に発熱、手足の発疹、爪の脱落を認めた。

今シーズンの手足口病では、水疱様の発疹像や病後の爪甲脱落などの非典型的な臨床所見がみられた。中でも手足口病に関連すると考えられる爪甲の脱落や変形は、小児以外に成人でも確認されており、当院では手足口病既往患者の約49%(31/63症例)に認められた。

爪甲脱落症は手足口病発症後、2カ月以上経過して発症しているケースもある。特に、東日本等、手足口病の流行が遅れている地域では、今後の動向に注意が必要と考える。

 参考文献
1)渡辺裕子,他,日皮会誌121:863-867,2011
2)Österback R, et al ., Emerging Infectious Diseases 15: 1485-1488, 2009
3)Oberste MS, et al ., Journal of General Virology 87: 119-128, 2006

かしい小児科 柏井健作
和歌山県環境衛生研究センター
仲 浩臣 寺杣文男 青木一人 玉置三朗 島田美昭

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